お揃いをもらうまで

姫、発つ ページ39

うちの姫
なんて言い方をするようになったのはいつ頃だったか

最初は面白半分で言ってたものが、
いつの間にか本物の姫になっていた

姫が本気で嫌がることはやらないし、
姫がやりたいと言ったことには全力で協力する

自然と出来上がったクイズノックメンバーの共通認識
メンバーの中には他の女性ライターもいるが、Aだけはどこか特別だった



「んー、暑い…」

そう呟けば誰かが冷房の温度を1度下げる


「疲れた…」

そう言えば誰かが近くに寄り添いAに癒しを与える


「川上さん、好き！」

そう叫べば川上とAをからかいながらも見守る


クイズノックはAを中心に回ってると言っても過言ではなかった


そんなAが、ここから旅立とうとしている



「て言っても、クイズ研究会の合宿で3日間いないだけですけどね」

「3日間だぞ！長いだろ！」

「あー、なんか前もそんなことありましたね。川上さん福岡事件」


3日間も姫が不在とは何事だ！不埒な姫め！


「私が3日間いないくらいで騒がないでくださいよ、もうこれは決定事項なんです」


そう言いながら、不在分の記事もしっかり仕上げてくるからこれ以上文句が言えない
社長としては非常にありがたいのだが、伊沢としては納得がいかん


「プリンスも一緒なんで心配いりませんよ。女子もいっぱいいるし」

「だけどさー…」


なんか、クイズノック以外でワイワイする姫はあまり好かれたものではない
他のみんなも俺とほぼ似たような心情だろう

一緒に合宿に行ける水上が心底羨ましい


「写真、いっぱい送ってね」

「ママだけ何も言わないね」

「可愛い娘には旅をさせないとね」

「ママ大好き！」


あー！また味方について頭なでなでしてる！ずるい！！


「パパもママに賛成だな。怪我なく帰ってきてくれればそれでよし」

「パパも大好き！」


須貝さんまで！家族設定このやろー！！


「川上さんは無条件で大好きです！！」

「…はいはい」


あいつ陰でニヤついてやがる…憎たらしいぜ…


「伊沢さんも素直に私をお見送りしてください」

「…行ってらっしゃい」


結局可愛い姫に負けて旅へ送り出すことになってしまった


「ちゃんとお土産買ってきますね！行ってきます！」



Aがいなくなったオフィス、
皆が溜めてた息を一斉に吐き出す

なんだかんだ寂しいんだよみんな


＠izw
『オフィスが静かすぎる。姫の帰還をただ待つのみ』

＠mzkm
―ちゃんと報告しますよ、安心してください

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