目眩く色彩

035.空白の裏側 (req.) ページ38

＊ Request from 唯華c様 ＊
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目紛るしい日々というのはものの例えであって、いくら忙しくたって“一つ一つ追って行くことが出来ないほど”の日々は来ないと思ってた。

…少し前までは。


『、うわ……』


“まぶしい”と口にしたつもりが空気だけ抜けてった。カーテンの隙間から漏れる光がズキズキと痛む頭に響く。

昨日までは咳が酷い程度だったのに、一気に悪化した体調に悪寒が走りぶるりと震えた。


今日で終わるのにいよいよやばいな…。


これは風邪特有の寒気なのか、なんなのか。この熱に気付いてしまったらベッドから出られなくなりそうだから歯を食いしばって起き上がった。

……もう少しだけ寝たい、と思っても提出期限という目に見えない圧力のお陰で自ずと体が動く。人間ってこういうところが凄いよね。


喉の痛みに耐えながら水を飲んで今日の予定を考える。レポートの提出、講義、オフィスに顔出す、記事と動画の提出、…てんこ盛りな一日だ。


今日までほぼ毎日徹夜三昧。

それも、今日で全部終わる。
だから頑張れる。


大丈夫、大丈夫と心の中で繰り返していつも通り身支度を整えた。


『あーあー……ん゛ん゛！

……声、がさがさすぎやん』


この状態でオフィスに行ったら福良さんに大目玉を食らいそうだなと予想しつつ。

昨夜の伊沢さんのLINEに返信したかも覚えてないくらい意識がふわふわとしてる中、提出期限ギリギリのレポートとその他のデータが入ったUSBを持って電車に飛び乗った。


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電車で酔うことなんてなかったのに、乗った途端に気持ち悪くて心が折れそう。
なんとか辿り着いた最寄駅から、目と鼻の先にあるキャンパスがこんなにも遠く感じたのも初めてだ。

レポートの提出を先に終わらせて、圧倒的体調不良のまま最後列の端っこで講義を聴く。


咳が止まらない、さむい。
さむいって漢字すらも脳内で変換できない。

この時点で限界を感じていた。


いつもなら嬉々として聴ける教授の言葉達がまるで呪文に聞こえる。

右から左へ流れてく文字と数字の羅列を追う気力は到底出てこなくて、気休め程度にボイスレコーダーを付けておくことしか出来なかった。


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何とか講義を乗り切ってオフィスに着いた頃には、ぐるぐると回る視界を無視するので精一杯で。


玄関を開け靴を脱ごうと屈んだ瞬間に、ぐらりと体が傾いた。


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