目眩く色彩

011. ページ13

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水「あの、それって」

医学部のプリンスこと水上さんが口を開くのと同時に、“伊沢拓司さんの楽屋って、ここですか？”と声に出す。


水「…え？はい？」

動揺する水上さんをよそに、先手必勝！と意気込んで楽屋のドアに手をかけて開いた。


『伊沢さ〜ん！』
伊「あ！？A！」


“わざわざごめんね〜！”と東大王でお馴染みのあの衣装を翻して駆け寄る伊沢さん。動画に出てる伊沢さんと違った雰囲気に一瞬固まる。

水上さんは届け物だと察したみたいで、私に続くように楽屋に入ってきた。


あぶない。憧れの人に窃盗犯だと思われるところだったわ。

スニーカーを渡して顔を上げると何故か勢揃いな東大王の皆さん。


…？？？
慌てて楽屋を飛び出て、張ってある紙を確認。


“東大王
伊沢拓司 様
水上颯 様
鶴崎修功 様
鈴木光 様”


待って 伊沢さんオンリーの楽屋だと思ってたからノックすらしてないやん。非常識すぎる！
廊下で頭を抱える私を見て、伊沢さんが心配そうに楽屋から顔を出す。


伊「なになに？どうしたの」
『……いや、あの、楽屋大部屋なら先言っといてくれません？』
伊「言ったら来ないじゃん」
『いや、そ…』


“そうですけど、”という言葉を飲み込む。
憧れの人全員集合ってどんなドッキリなの？吐きそう。

顔を上げると伊沢さんの後ろから水上さんが覗き込んでた。ひえぇ顔面偏差値が高い。


伊「まあまあ、紹介したいからこっちおいで」


やや強めの力で手を引いて楽屋に引きずり込む伊沢さんに、私はこう叫ぶしかなかった。


『貴様最初からこれが目的か！』
伊「ははっ」


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『……す、すみません。先ほどはお見苦しい姿を、』

なんとか落ち着きを取り戻した私は、伊沢さんが敵(？)だと知ったので理学部繋がりで知り合いの鶴ちゃん先輩の隣に座る。


一人ずつ自己紹介をしてくれるが“存じております”のオンパレード。心の中でそう相槌を打つことしか出来ない。

豪華すぎてこの部屋酸素が薄いんだけど？


鶴「…Aちゃん自己紹介しないの？」
『あ……金澤Aと申しますっ』


先輩に言われて頭を下げる。


先程からずっと借りてきた猫みたいになってる私を見て伊沢さんが笑ってる。

何がそんなに面白いんだ！！


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