8 ページ8
「あ、」
『あ。』
コンビニから出てすぐ、
「ふかざわ、」
『おいそれやめろ(笑)』
推しに会う。
『帰り？』
「そうです、けど」
『そんな顔する？(笑)』
くふくふと笑う顔も、もやっとした感じも、相変わらずだいすきなんですけど。心の声が漏れそうになるのを。ぐっと耐える。
『ねー。』
「何です？」
『家この辺なの？』
「………、」
『だからその目やめろよ(笑)』
「あの、」
『ん？』
ずっと同じペースで後ろを歩く彼に、
「暇なの？」
『まあ、今日の仕事は終わったね。』
「ふぅん」
『……。』
「………、」
待って？ずっと後ろにいるんだけど。
家こっちなの？
赤信号で止まると、同じように止まる。
信号が変わると、並んで歩きながら、
『つけてるわけじゃないよ？(笑)』
「………、」
『こっちなの。ほんとに。』
「何も言ってません」
大通りから一本入ると、やっぱり同じ様に曲がる。
公園を抜けると、最初に見えるマンション。
『ここなの？』
「そうですけど、」
『えっマジで？』
「何か？」
『や。近くにいたんだって驚いてる。』
エントランスに入ると、一緒に入って来る彼を振り向く。
『ごめんなんだけど。俺もここなの(笑)』
「…………」
『何階？』
「あ、いや、……だい、じょぶ、なんで」
『そ？』
彼がボタンを押すのを、見ない方がいいのに。
エレベーターに乗った彼が、
『またね。』
って。
ほんとに何でもないふうに、
咳をするみたいに声をかけるから。
振り向いてしまう。
世の中には。
知りたいコトと、知らない方がいいコトとあって。
その、知りたいコトを知ってしまうと。
苦しいって分かったんだよ。
言わないけど。
絶対に言えないけど。
深澤くん。
私は、あなたのファンであるコトを。
辞めなくちゃいけないかもしれない。
ごめんなさい。
もう、純粋に。
片想いはできない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：k | 作成日時：2020年10月18日 17時
