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「パパなの?」
ホテルの部屋で開いたメッセージに向かって、大きな独り言が出た。
"無事に帰ったら連絡入れて"
キャリーバッグを閉じると、お店を探しに外に出る。
「お腹へった、」
調べるのは面倒くさいから、適当なトコロに入ろうときょろきょろしながら歩いていると、
「っ、ごめんなさい」
向いから歩いて来た人にぶつかった。
「こっちこそごめんね〜ってあれ?
何か見たことあるかも。お姉さん芸能人?」
「え?や、違います」
「じゃああれだ。モデルさん」
「ですから、」
突然、腕をつかまれた。
「え、違う?きれいな人だからさ、何かやってんのかな〜と思って。」
「あの。離して、」
「ちょっと時間ある?」
あーーーーイライラする。
全く知らないのに馴れ馴れしく話しかけたり、許可もなく触ったりする人。
下心丸見えなんだよ。
「触らないで、」
「え〜何?」
「離してっ」
どうしよう。
この人話通じないかも。
「深澤くん以外の人は触らないでって言ってんだよっ」
『みかっ。』
近くで聞こえた声に、顔を上げる。
『何やってんの。え、なに?友達?』
掴んでた腕をぱっと離すと、
「な、なんだ〜。待ち合せって彼氏じゃん。またね〜」
そそくさと去って行った。
『さっき、何て言いました?』
「お腹へっ、」
『違うだろ(笑)』
深澤くんが、ふわりと笑う。
それだけで。
私は救われる。
『来てるなら。何で言わないの?』
「別に、」
『別にじゃねーよ。連れてかれたらどうすんだよ。』
「何で怒るの?」
『怒ってないじゃん。』
「怒ってるじゃん」
『そう見えてるならごめん。でもさ、心配じゃん。』
色眼鏡の奥の。その目が。
真っ直ぐこっちを見る。
「深澤くん、」
『ん?』
「助けてくれて。ありがとう」
くすっと笑うと、
『どういたしまして。何もなくてよかったです。』
って。頬をつまんだ。
『ホテル?』
「うん」
『俺メンバー待たせてるから。とりあえず行くわ。』
「え、ごめんなさい」
『後で連絡するから。起きてて?』
「……わかった」
じゃね。って。
ポケットに手をつっこんで走って行く。
聞こえちゃった。かな。
触れたいのも、触れてほしいのも。
深澤くんだけだよ
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作者名:k | 作成日時:2020年10月18日 17時