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『いいじゃん。』
「嫌です」
コンビニからの帰り道、なぜか家に来ると言い出して、さっきから堂々巡りだ。
『何で？そんなに拒否らなくてもよくない？(笑)』
いやいやいや勘弁してよ。
壁一面自分の団扇やらポスターやらが飾られてる部屋なんて、恐怖以外の何物でもないと思うけど。
そもそも。
部屋に入れる。というコトは、あんなコトとかこんなコトになる可能性も………
『何もしないよ。』
「………、」
過去に。
何もしない。と言われて、何もされなかったコトは１度もない。
そこそこ生きてるんだから、そんなコトは解るんだよ。
『分かった。行かないから。そんな顔しないでよ(笑)』
かはははって乾いたように笑うと、
『ん。』
ポケットから手を出して、こっちに向けた。
「え、」
『えって何だよ。恥ずかしいだろっ。早く繋いでくれよ(笑)』
何それかわいい。
かわいいんですけど。
「だって、外だし」
『ああ、そっか。ってちげーだろ！こうゆう時は喜んで繋ぐんじゃないの？俺超恥ずかしいんですけど(笑)』
「へー」
すっかりポケットに戻ってしまった手を。
やっぱり惜しかったかな。とか思う。
『なんだよ。』
「歴代の彼女さん達はそうしたんですねー」
『おまえさ(笑)マジでさ(笑)』
深澤くんがたまに言う、"おまえ"が。
何よりきゅんとするなんて。
エントランスに、なんとなく離れて入る。
『おやすみ。』
「おやすみなさい」
いつも。
部屋に入るまで待っててくれるのを。
そうゆうトコロだよ。って思いながら、ドアを閉めた。
・
・
・
「え、ほんとに？いいの？」
「西だけど行くでしょ？」
「うん。行く！ほんっとに嬉しい。ありがとうって伝えて？」
ヲ友達のヲ友達が、チケットを譲ってくれることになった。
以前譲っていただいたから。という理由だけど、そんな律儀な人は珍しい。
「推しに会えると思った途端さー、世界の色が変わるよねー」
「それ分かる」
「モノクロでしたからね」
「……でしたね」
「新幹線一緒に取るよ？」
テーブルの上で、携帯が震えた。
上を向けていた画面に、"深澤くん"って。
しっかり表示される。
咄嗟に。手で隠す。
「出て大丈夫よ？」
「……後で、いいかな」
膝に置いた携帯を、にぎりしめた
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作者名：k | 作成日時：2020年10月18日 17時
