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「…雨が降っているというのに月は綺麗やな」
少し冷え込んだ屋敷の軒下から見る景色、夜の空に浮かぶ欠けた月はやはり完全な丸でないところを見ると俺に似ているなと歪んだことを思わされる。それに比べて今夜咲いた梅の花に視界を移せば淡い桃や白磁が自然に色づいていて彼女の方がよっぽど美しいのだと思う。
『それだったら梅はどうでしょうか？白や桃色のものを合わせれば綺麗にまとまるかも』
＿＿花はいつも素直に生きている。
ただひたすら真っ直ぐに伸びて太陽の恩恵を受けて咲かせる。だから純粋に暖かく綺麗と思わせるような笑みを浮かばせてしまう。それだけで妖術を使った訳でもないのに周りの心を動かしてしまうほどの力がある。
花なんて、俺にそんな趣向はなかった。
どんなに色が鮮やかであろうが、大きく咲き誇ろうが俺にとっては全部淀んだ薄鈍にしか見えない。
けど彼女が助言をしてくれて、育ててみようと思えてしまってそれで彼女もたまに手伝ってくれて初めて色が見えたような気がした。
だから忽然と枯れてしまう運命だって仕方のないことなのだろう。
後方に振り返れば白い障子。その中に影が一つ、静寂の中佇む姿。俺は扉に手を掛けて引き戸を開けば鏡代の前に立ち白無垢を纏う一人の＿＿人間。
部屋の中に足を踏み入れるとその人物は存在に気づいたのかゆっくりとこちらに振り向いた。
「とても綺麗ですよ」
無表情で見つめる花嫁。それは息を飲みそうになるほど綺麗で、だけどやはり物足りなくて。瞳の中の色はもう微睡みのように消えてしまっていた。
「…そろそろ儀式を始めましょうか。＿＿狐の嫁入りを」
小さな体に手を伸ばしてみれば俺の手に重ねるように白い肌を置いた。
第二章 狐の嫁入り編へ続く
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夜紅茶(プロフ) - Naoさん» コメントありがとうございます！そんな前から見ていただいて嬉しいです！気長に続編を待っていただければ幸いです。 (2020年10月4日 19時) (
レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - この小説が書かれだした頃から見ているのですが夜紅茶さんの言葉選びは凄く人を惹きつけるもので素晴らしいと思います！続き待ってます！楽しみです！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
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