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食事の方を食べ終わり縁側にある軒下で春の暦を静かに感じていた。私の住んでいた世界の季節とは真逆の暖かい日差しを感じていつつも突如寂しさがじんわりと滲み出てきた
…お母さん、心配してるかな。
この時代に迷い込んで助けて貰ったのは良かったもののやはり自分の住んでいた世界のことを気にしてしまう。
「___おーい、センラー。じゃまするぞー?」
突然、ハスキーな男性の声が玄関の方から聞こえてきた。それと同時に足音がこちらへと向かってくるのが分かり体が固まった
よ、妖怪だよね?どう見てもここら辺の地域には人間は私以外誰一人といないよね?
「…お前誰?」
私は体を縮こまらせて廊下から伝ってきた人物の姿を捉えた
特徴的なたぬきのような耳と尻尾。勾玉のように綺麗で冷ややかに向ける深緑の瞳に黄褐色の髪と少し低い背丈。肩には頭に葉っぱを乗せた狸がおり翡翠色の着物を纏い青年のような少し幼さが残ってはいるものの整った顔立ちをしていた
…えっと、お客さん?だよね?もしかして私完全に怪しまれてる?
「その子は人間の迷い子です」
私が返答に困っていると後ろからセンラさんが現れて代わりに一言説明してくれた。すると彼は目を点にしてもう一度こちらを見やった
そりゃそうでしょうね。私のことを見ただけで妖怪の都でもさんざん騒がれましたから。
「この子が帰れる道を見つけられるまでは俺が面倒を見ようと思いましてね」
「…へぇ、あの“天下のセンラ様”がねぇ」
……天下?
するとたぬき耳の彼はこちらへと近づき隣に座り込んだ。先程とは打って変わった柔らかい表情を見せ和やかな声で語り掛けてきた
「俺は獣族の長うらたぬき。よろしくね、人間のお嬢さん?」
「よ、よろしくお願いします」
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夜紅茶(プロフ) - Naoさん» コメントありがとうございます!そんな前から見ていただいて嬉しいです!気長に続編を待っていただければ幸いです。 (2020年10月4日 19時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - この小説が書かれだした頃から見ているのですが夜紅茶さんの言葉選びは凄く人を惹きつけるもので素晴らしいと思います!続き待ってます!楽しみです! (2020年10月4日 18時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
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