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彼は一個上の先輩の相川真冬先輩。ニックネームなのかまふまふと愛称が付けられているらしくそっちの方が気軽だからと本人からニックネームで呼ぶようにとリクエストをされたけれどもさすがにそこまで馴れ馴れしくすることが私には難しくて名前呼びで許して貰えた。
先輩は同じように文学作品や詩集などの作品がお好きなようでお互い話が合ったりと新たに自分の日常の中へと自然に踏み込んできた。
そしてあの日からの出会いでたくさんの事を彼と共有してきた。
「今度一緒に図書館とか行ってみない?」
二人で少し遠い図書館に行ってお互いの好きな作品とかを読んで感想を言い合ってみたり。
「綺麗な景色があるんだけど一度行ってみたいなって」
自然豊かな景色や幻想な景色を見に行こうと写真部から色々な画像を持ってきてくれたりだとか。
学校の閉まる僅かな時間まで真冬先輩と過ごしていつの間にか学校に行くこと自体が楽しみという淡い期待の感情に変わっていた。
彼のおかげで、鮮明な景色を見ることが出来た。
灰色のキャンバスに次々と色らしい色がついた鮮やかな世界が自分の瞳の奥にまで広がっていた。
「あの、真冬先輩」
「なに?」
「先輩は私とこうも毎回一緒にいて楽しいですか?」
ある日、いつものように日が落ちかかった図書室の中で本を読みながら向かい合っている時にふと浮かび上がり問い質した疑問。
友達もいなければ知り合いすら居ない私に話しかけている時間が無駄なんかじゃないかって。もっとまともな人が真冬先輩の近くにいるんじゃないかって。
私が彼の世界を邪魔しているようにも思えて。
「…もしかしてAは僕といて険悪感とか湧いてきた?」
「ち、違います。決して、いや断じてそういうことではなくて」
意外にも真冬先輩は不安そうにしていたからか私の口からすぐさま言葉が飛び交った。するとまふ先輩は「よかったぁ」とまた顔を綻ばせて本の中の文章へと目を向けた。
「ただ先輩の有益な時間を私のせいで潰してしまっているのではないかな、と」
「…なぁんだ。そういうことか」
彼は納得したかのように本を閉じてから席を立ち上がり荷物を持った。そして何を思ったのか私の隣の空いている席の方へと移動をして座り込んだ。
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作者名:夜紅茶 | 作成日時:2020年6月9日 16時