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「俺が……俺のわがままからセンラをこんな風に追い込んで、荷が重い運命を無理やり背負わせちゃったから。充分苦しい思いをしたんやから、もう楽にさせてあげたい」
事の顛末の原因の半分は俺だ。苦しい思いをさせてセンラを死なせてしまったこともあれば、死なせずに妖怪として生まれ変わらせてしまった俺の責任でもある。
だから、俺がセンラを孤独にさせる訳にはいかない。全てを背負わせないように、少しでも同じ運命を分け与えて背負えるのなら。
「二人が儀式の邪魔をするんやったら俺はこの刀を抜く」
俺は鞘に手をかけて抜刀の形に入る。二人は相当手強いから一人で止めることなんて無理は承知だ。だから儀式を進めることができるように少しの時間くらいは稼ぐつもりでいた。
「……刀を振るう理由は同じってわけか。だが、残念だったな。俺はセンラに同情の心を向ける気はさらさらない。まぁ、俺ってそういう性根をしてるからな。……人間の娘を今すぐ元の場所へと返してもらう」
そう言って、俺に向けたことも無いような氷のような目を向け、刀を鞘から抜き、鋭い刃先をこちらに突きつけた。
分かっていた。うらさんやまーしいだって黙って指をくわえて見ているだけじゃないことを。戦うための意思も固めていた。
けど、やっぱり心残りもある。
「うらさんもまーしぃも、そう簡単には引いてくれないよな」
心残りを振り払うように俺は刀を抜いて刃先をうらさんとまーしぃの方へ向けた。俺からの裏切りの合図だ。
「簡単に通しはしない」
¨❀*✿*❀¨
雅楽の音が止まり、私はその景色を傘の隙間から見あげた。紅の社の門の先、少し離れた場所で大木の桜が堂々と咲き誇り、春を強かに証明しているようだ。
その中へ足を踏み入れると見えてくるのは和風な神殿だ。その前に赤い杯や日本酒が入った酒瓶、2人分の席がお狐様と私の座席のような場所が用意されていた。
「そこに座ってください」
その言葉の通り、私は引き寄せられるように真っ直ぐ進んで片方の座席に腰を下ろす。
私はなんとなくお狐様の方へ視線を移せば、眉を少し下げ、困ったような笑みを浮かべながらも私の隣へ静かに腰かける。
「……儀式に移る前に、少しだけお話をさせてくれませんか？」
お狐様だけしか見えない世界の中で、私はその少しだけ沈んだような声に耳を傾けた。
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