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無言になりこちらをじっと見つめてくる。その視線がすごく気まずいけれども目の前の恐怖によってこれ以上離れることが出来ない。
震えてその場から動かないでいると彼は長い睫毛を伏せて口からため息を着き、目の前に視線を向けて形のいい唇から言葉を発した。
「まーしぃあんまり怯えさせない。話を聞かせようにもまともに聞こえなくなるやろ」
「…はいはい」
志麻さんは死神から咎められてつまらなくなったのか不本意そうな表情で一瞬だけ私と目を合わせたがすぐに逸らして傍からすんなり離れてくれた。
もしかして庇ってくれたのかな。
「アンタも俺のとこにいつまで引っ付いてるつもりなん」
目線をこちらに向けたかと思えば私が迷惑をかけていたようで慌てて「ごめんなさい」と謝り死神の元から離れるとぱっぱと身なりを整え直していた。
「坂田、死神」
「自己紹介手短すぎ!よろしくの一言でもいえばええのに」
「別に俺はよろしくもなんもないしええやろ。そんなことよりセンラもなんか言ったら?」
センラ、そう呼ばれたのは多分まだ挨拶をしてない無い黄色とオレンジが所々目立つ人。右の方へ振り返れば片腕でジャック・オー・ランタンを抱えながら丁寧な振る舞いでお辞儀を披露した。
「ハッピーハロウィン、僕はセンラと申します。収穫祭の主役、ジャック・オー・ランタンの精霊…ってまぁそんな精霊ってほど綺麗なもんじゃないけど
「モンスター…」
「そうって言われてもまだ信用し難い?」
「…いえ」
さっきの志麻と名乗ったヴァンパイアの記憶をフラッシュバックさせて行動を読み取ればそこまで信用出来ないことでは無い。
「そしてここ、君と俺らがいるのは常闇の夜とこの船しか存在しない怪物だけの創造の世界」
うらたぬきさんは簡易的に説明してくれたが船と言われても想像がつかない。ましてや墓場がある船なんて私の記憶上そんな頓珍漢なものがあるわけが無い。
「ただの墓場じゃないですか。動いている気配もないし」
「…まぁそうだろうね。それが君の知ってる“世界”。けどこの“世界”ではそんな馬鹿げた話も本当になるんだよ」
うらたぬきさんは片手を真上にあげて指を一回鳴らした。すると私の左側にはさっきまでなかったはずの真っ黒な木製扉がなんの拍子もなく忽然と現れた。
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