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「坂田のことを過信して１００％鵜呑みにしてたら、自分のことすらよく見えなくなって、痛い目に合っていましたなんてこともあるかもしれない。この船の中で一番信用できるのは自分だけだと俺は思う」
「……」
「ま、あくまでそれは仮定の話やし？間に受け止めなくてもそれは個人の問題」
だんまりとし、俺の言葉一つ一つを真摯に受け止めていたのか視線を下ろして木板の床のどこか一点を見つめていた。
信頼できるのは、自分の勘だけ。
『厄災のバケモノめ！！』
平気で周りは人を裏切り、誰かのせいと矛先を向けないと生きていけない愚かな性分だ。その相手は誰でもいいんだろうけど。
それを重々承知している俺だからこそ脳天気な人間に厳しい言葉を向けられた。
✟✵❃✞❃✵✟
怪物を一括りの存在として見る気は無いつもりだけれども、変なところ真面目になるのが怪物という部類なのかと思う節がある。
「…坂田さんの話はともかく、その成り行きならセンラさんも信用しない方がいいんですよね」
じわじわと伝わって染み渡るセンラさんの発言。自分が反論できないのは悔しかったけれど、センラさんの発言も最もで私の頭は自分でも驚くくらい意外と冷静だった。
「俺は最初からお前を受け入れるつもりもないし、隙も作らない。アンタはせいぜい余計なトリガーを引かないよう使えるか使えないかのお飾り程度の小さな脳を使って、上手く立ち回れるかどうか頑張ってみれば？」
「前者の言葉はともかく後者の言葉悪びれもなければ長すぎやしませんか」
「マヌケ」
「結局単なる悪口じゃないですか！？」
あれ、もしかして私って他の人より常識の範疇が外れてるからとかの理由で連れてこられたりしてしまったのか？むしろ怪物のセンラさんにここまで言われると…いや、そういえば似たようなことを他の人にも言われたな。
ふとセンラさんは白い手袋を身につけた指先を私の顔へと伸ばし、肌へ触れた。
その意図がつかめず私は固まったまま、されるがままにただじっとカスティールを見上げる。不覚にもイケメンの部類に値する顔立ち、異性に見つめられなれていないせいか触れられた布越しの手から自分の頬へ徐々に熱が広がっていく感覚がした。
「変な顔」
「へっ？」
「アホ面って言ったんやけど」
「…っ」
なら、なんで私へ抵抗なく触れたのだろうか。その考えを雲隠れさせるようにセンラさんは口角を上げてイタズラに笑った。
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