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「…よわっ」
目の前で顔を青白くしたまま気絶したAAとかいう人間。この船に来てから果たして気絶したのは何回目やろうか。
というか、俺の身体に躊躇なく触れていた人間が呆気なくこんな程度でぶっ倒れるとかこの先が思いやられる。あとで坂田のところにでも置いて行けばええか。
(今回はまーしぃも悪いわ)
吸血鬼というのは弱点が多い。それ故に理性も本能の赴くまま、我慢というものを知らない。
一応俺は制御することが出来た。ただ今後その肉体や血を味わうとなったらどこまで耐えられるのか。そんなの俺や他の怪物にとっては拷問みたいなものだ。
「…ったぁ」
「起きましたか?」
「あ、センラ?」
人間の身体を横抱きにして持ちあげればまーしぃは理解したのか「あぁ」とだけ他人事のように乾いた言葉を発した。
「そういや丁重に扱うルール忘れとったわ」
「大抵そのルール違反を起こしてんのまーしぃかうらたんなんですからね。反省してくださいこの常習犯組」
「ええやろ。それに本来はもう人間の世界でもハロウィン終わってるんやし喰っても文句はないやろ」
そう、本来ならば収穫祭は終わり客としての名はなくなる。だからAに対しての処遇は煮るなり食べるなりしても誰も口を挟んだりしない。
けど今回は特例中の特例。船長命令という傲慢な権利を使ってこの人間を生かすことになった。
その趣旨について軽く説明すると、まーしぃは納得しないのか面倒くさそうに顔を歪め、複雑そうな表情を浮かべていた。
「けど人間界からの客としてじゃない人攫いについては何も言われてないから、そこら辺に規制をかけられない限りまだマシやん?」
「…まぁそこには異論はない。それにこの人間が上物だってこと、わからんくもないし」
「それと、凌辱はせんようにって船長から」
「え?ダメなん?」
「アホか」
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