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しかし意外にもその行動でセンラさんの殺傷しそうな勢いがピタリと止まった。説得が聞いているのかは分からないけれどもとにかくそのまま動かないままでいよう。
「…なんで僕抱きしめられてるんですか?」
「え、いや私センラさんを止めようとして体を拘束するしかないかな、と思いまして…」
「離せー!!人間が俺の身体に触れんな!」
しかし今度は私の腕の拘束を解こうと動いている。え、ちょっとなんかこの人意外と情緒不安定だし力凄く強いのでは。
しかし男性と女性。ましてや怪物と人間では力の差も著しかった。
「っわ…」
身体が無理やり離されたせいか私の体は後ろへ倒れそうになる。私、頭打つかもしれない。
衝撃が来ると思い目を瞑り両腕を少しだけ広げた。
「__おっと、平気?」
しかし木板の硬い感触はなく代わりに来たのは衝撃を吸収するかのように肩に添えられた二つの手と聞き覚えのある声。
振り返れば黒の不格好な顔をした猫耳フード。その布の下から宝石のようなマラカイトを覗かせていた。
「うらたぬき、さん」
私の血液を致死量ギリギリまで飲み干した彼が身体を支えながらこの状況の中を楽しんでいるかのように笑みを浮かべている。
殺されかけた相手だけれどもさすがにこの状況で人とを選んでいる場合じゃないと判断した私は彼に助けを求めた。
「随分騒がしいけど何事?」
「あの!やまだぬきちゃんが!」
「やまだ?」
私が指を指した方向にうらたぬきさんは顔を向ければ「あぁ」と何かを納得したかのように声を漏らした。
「そんな大袈裟に慌てなくても大丈夫だよ」
「え?」
その言葉に私は困惑していると「まぁ見てろ」とにたぁっとした表情を浮かべるうらたぬきさん。な、なんだろう。
「死ね!やまだぬき!」
センラさんは力いっぱいやまだぬきちゃんに向かって蹴りをかました。私は見てられなくなり目を瞑った。
「…あれ」
しかし次に来たのは蹴ったあとの衝撃の重い音ではなくセンラさんの驚きの声と何かを弾き飛ばしたような金属の音。
目を恐る恐る開ければやまだぬきちゃんの額の緑色の猫が光って周りに薄緑の結界が張られていた。
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