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驚異的な行動に目を疑った。
死にたいが彼の一番やりたいこと、なんて。けれども冗談で言っているようにも思えない。坂田さんの目は確実に全てを手放して死んでしまいたいという願いを宿していた。
「もうかれこれ1000年以上は生きてる_というか世界の理に生かされてる。死ぬために行動しようが簡単には死ねないんよ。世界が許さない限り身体の外側も内側も薬漬けにしようが今みたいに首をぶっ飛ばそうと鎌を振ろうが結局痛覚を感じるだけ。皮肉にもこの身体が丈夫すぎて腹立つわ」
「…や」
しかし私は今言おうとした言葉を塞き止めた。「やめてください」そんな風に言える立場なのか自分自身は。坂田さんのことを何も知らないくせに口を挟めるようなやつじゃない。完全に部外者だ。
けど止めたいと思う自分もいる。止めたいって思ってるはずなのに身体が動こうとしないのが現実で現状。言葉すらもう出てこようとしない。
「いろいろ俺も退屈はしてるんだよね。たまにうらさんとかまーしぃとかセンラは人を攫ってきてはよく食べてるから俺はその残った骨とか魂とか喰らったり。まぁ後はポーション作りとか。でもそれも全てせめてもの退屈しのぎ、またすぐに同じ夜を繰り返し眺める日々が続くだけ」
「……」
「毎年訪れるハロウィンの期間だって丁寧に客を扱うように規則で決まっとるけど結局のところ何も変わらん。絶対我慢しきれなかった誰かに喰われておしまい」
刃先を首の付近から離して墓石の上へと座り込む。彼は朝日が登らないこの世界に対して満足している様子ではなかった。
ローブの中から覗く赤髪が風で揺れてこちらに瞳を向ける坂田さん。その左目に宿された白い罰が悲しげに映る。
「もう用は済んだ?」
本来の目的の帰るための手がかりを探すこと、それはいつの間にか私の頭の中から抜け落ちていた。そんな問いに黙りこくっていると坂田さんは墓石から降りて私の方へと近づいた。
「…A、やったっけ?」
教えたはずのない私の名前。どうして知っているのかと聞くために俯いていた頭を上げようとすると彼の手のひらが頭上に置かれた。
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