光るもの ページ1
暗い夜の海の中。
きらりと光るものが、波に揺られもせずにするすると沈んでいくのを見た。
常に死と隣合わせの海だけれど、わたしはあまり関係ない。
だから、その光るものを追いかけることにした。
わたしが泳ぐと、その光にはすぐ届いた。
どうやら意識を失った海の外のものだったようだから、同じ速さで水面に戻る。
水面から出ると、その子は輪郭を取り戻した。
濡れてつやつやした薄い色の髪、とても綺麗な顔、それから渇いたら大きそうな翼、そして光っていたものはその子の頭上にある輪っかだった。
死んだ人なのかな。
それとも、天使なのかな。
どちらにしても、この暗い海に沈んでしまっては勿体ない美しい子だった。
もう二度とこの子が海に落ちてしまわないように。そう祈りながら、また会ってみたいと思った。
その小さな思いから、わたしのウロコをこの子の手にひとつ握らせて、ひとつずつ、ふたつの羽に隠すことにした。
ひとつ失くしてしまってもいいように。
ひとつ落としてしまってもいいように。
もしこの子が輪っかの光を失って海に落ちたら、きっとウロコが光るものになる。
そう考えると、あるかも分からない胸がどきどきした。
きっとまた、ね。
くるりと振り返ってわたしは暗い海へと帰る。
わたしはわたしが海になってしまうまで、あなたがまた落ちてしまうのを待っている。
・
夜風に身を震わせ、私は目を覚ました。
やさしい時間が、あったように思う。
それは、今の帰る場所よりもやさしかった。
起き上がった目の前に。広い海の上に、大きな月が浮かんでいる。
その下に月が引きずる光があった。
そして。
ゆらゆらと光っている水面の下に、きらりと光るものを見た。
それは一瞬だったけれど、確かに。
思わず前のめりになって手をつくと、ちくりと痛みが走った。
手のひらには、薄く月光が透き通る大きなウロコがある。
綺麗！
立ち上がってから、海に浸してみる。
やっぱり、あの光だった。
会いたい。
きっと、私たちは仲良しになれる気がする。
もし、私が帰って罰に耐えれたら。
すぐに抜け出して海に落ちよう。
その時は輪っかも翼も取られて、帰れなくなっているはず。
その時を楽しみにするだけで、どんな罰にも耐えれそう。
私は私が絶えるまで、海に落ちると約束する！
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作者名：ニャンコソバ２ | 作成日時：2021年1月31日 23時
