金魚鉢。 (ページ38)

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『お疲れ様でした～！♪』
「はーい、お疲れ様～。」

取材を終えてから、いつも通り店は
吉乃に任せてユラのご飯やらお風呂
寝かしつけを終え、店の掃除をして
いると、

コンコンッ───…

そう入り口の窓を叩く音が聞こえて
振り向けば、そこには裕くんの姿。

キャップとマスクで変装をしているとはいえ、
芸能人がノコノコと、、、

「…ちょ、何してるんですか？！」

焦ってドアを開けると、

『なんや懐かしくて。』

なんて優しい笑顔を向けると
適当なテーブル席に座るから、
とりあえず店の中が見えないように
シャッターを閉めて戻ると、

『...アイツとうまくやってんのかと思えば、なんや違うみたいやな？』

なんて、一言。

「..あ、まぁ、でもジミナが悪い訳じゃないの。」
『うん、何となく察したわ。そっくりだもんな？...子供。』

「...えっ、」
『まぁ、お前のことやからアイツには何も言うてへんのやろ？』

なんで、裕くんは私を分かっちゃうん？

何も話してないのに...

「...うん。」
『そっか、...つらかったやろな。』

そう言われた瞬間、
何でか涙が溢れて止まらない。

────────────…

─────…

2年前、風邪を引いたのか体調が
悪い日が続いて病院に行った。

『おめでとうございます、15週目ですよ。』

医者の言葉に頭が真っ白になった。

ジミナと少しでも一緒に居たくて移住して、

やっとカフェも軌道に乗って、

毎日が幸せで仕方がなかったのに、

１からまた始まる人生に夢が
いっぱいあったのに...

でも、何回考えても結局
命を無駄にする事だけは
絶対にしたくなくて。

でもそうするならジミナとは
一緒に居ることは現実的には
不可能で。

この事をジミナに話したとすれば、

諦めてくれ or 僕も何とかする

の、二択ではあるんだろうけれど、
どちらにせよ負担が掛かるのはジミナだと
思った。

だから、彼が海外で忙しくしている間に
色々急ピッチで進めた私は、

いや、本当は違う、二択じゃない。

私は怖かったんだ、、

やっぱり前の仕事が仕事だったから、

“本当に俺の子なの？”

って、三択目の言葉を掛けられたらと
思ったら、怖くて怖くて堪らなくて...

何も言わずに、日本に帰ってきた。

──────────…

────…

「────…逃げ出した分、あの子だけは私が、幸せに..っ、」

『..本当、Aはいつも自分は二の次やな？』