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《A》
徐々に上に上がってくる手になんとも言えない悪寒がして逃げようとすると今度は腕をつかまれる
どうしよう逃げな…！
声、出さな…！
駅員さんからは死角で、あたし達のことは視界に入ってない
ほんまに怖い時って人間、声出んくなるんやって長尾ちゃんに言われた雑学をこんなときになって実感する
『1人でおったってなぁ…しゃあないやろお…
はぁ…』
男の人は息を上げながら自分の下半身に手を近づけていく
それが目に映って、あたしの足りない知識でこれからされることが頭によぎって吐き気がする
助けて……
誰か……………
バシッ
風雅「離れろゴルァ！！！！！！！！」
「…ふうが…………？」
一瞬なにが起こったか理解できなかった
目の前にいたはずの男の人は勢いよく尻もちをついた拍子に椅子に頭をぶつけたらしく、うずくまってる
風雅「走るでッ！！！！」
「えっ…う、うん！」
呆然としてると隣からそう言われて、
理解も出来てないまま返事をすると一気に改札を抜けて、丁度来た電車に乗り込む
後ろで男の人の怒鳴る声とそれを止める駅員さんの声が聞こえたけど
なにを言ってたかはさっぱり聞き取れへんかった
それぐらい引っ張られるがまま走った
「はぁ…はぁ……」
何年ぶりかにした全力のダッシュはあんなにちょっとの距離やったのに、心拍数を最大にするには充分やった
電車が動いたのと同じように頭も回転しだす
息を整えながら風雅を見て、ありがとうと言おうとすると
風雅「…ほんっま…アホなん？自分……」
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作者名：鹿丸 | 作成日時：2020年5月3日 1時
