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アナウンス室に向かいながら自分のスマホでタイトルを検索してみる。
関係者試写の段階だから一般公開はもうちょっと先か。
…あれ。
ダブル主演で片方は女の人の名前なんだけどもう一人が、


「さくま」


こんな仕事決まってたんだ。
たしかにアニメが好きで、それを仕事に生かしていけるようにしたいって言ってた。
メンバーのふっかもファン層を広げてくれたと言ってたっけ。
けどまさか作り手側にまでまわっていたとは思わなかった。
しかも映画だし、主演だし。
いつの間にか口内に溜まっていた唾をコクリと飲み込んで、そしてハタと気付く。
そんなに驚いてたのか、自分。

あ、LINEの通知。
画面の上に表示されたそれ。
送り主は佐久間だった。
阿部ちゃんの好きそうな、までは読めたけどなんだろう。
通知が消える前にさっとタップする。


阿部ちゃんの好きそうな店見つけた！
ここ行こ！！！


そこまで読んだところで食べログのリンクが送られてきた。
店名からして俺は行ったことないご飯屋さん。
メニューを見ていたら確かに美味しそう。
だけどなんとなく、なんとなくだけど返事をすぐ打つ気にはなれなかった。
なんだろ、心の底に形を成さない黒いものがちょっとずつ沈澱していく感じ。
あの笑顔に会いたいのに、会いたくないという相反する気持ち。

それは、そうだな…昨日あんな話をしたから？
だって佐久間は努力して、着実に目標を実現させてて。
だからそう、昨日の俺がしたどうしようもない話をどんな気持ちで聞いてたんだろうって。
バカにするような奴だとは思ってないよ。
そうは思ってない、けど…。
佐久間が突然すごくキラキラした遠い人のように思えて、なんだか急に不安になった。
笑顔が好きだよって言ってくれたたった一日前は、画面越しでもその存在を近くに感じられていたのに。

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