褪色する春＿skab

２０ ページ25

その後二つ目も綺麗に出来た。
佐久間も後は形を整えるだけ。


「んー。」
「どうかした？」


楕円形を作ろうとしてるにしては、なんか違うように見える。
…これって、


「あ、出来た。
見て見て、ハート！」


佐久間の手のひらにのったハート型のそれ。
思わず目をパチパチ。
これ、俺に？


「手作りと言えばハートだよね。」
「何その方程式。」
「新婚さんあるあるじゃないの？」
「しんこん…。」


俺、脳みそがパニック起こしすぎて爆発しそう。
いや、じゃあこの状況は


「だってこれ新婚さんごっこって感じしない？」


してなかったけど、そんなこと言われたらなんか意識するじゃん。
妙に、いやすごく意識する。


「、しないって。
何言ってんの。」


友達の振りしなきゃいけないから、口ではそう言っておくけどね。



フライパンに油をひいて用意すると


「じゃあ最初は阿部ちゃんから焼いて。」


と言われたので自分の作ったやつをフライパンに並べて焼く。
じゅううっ、と焼ける音が既に美味しそう。


「そろそろひっくり返して良いかな。」
「いっちゃえいっちゃえ。
あ、でもちょっと待って。」
「どっちだよ。」


慌ただしい佐久間に笑う。
その佐久間はスマホを手に取った。
それからポンという電子音。


「いいよー。」
「待って。
それ絶対録ってるじゃん。」
「正解。
ほら阿部ちゃん頑張って！」


俺のことなんか録ってどうするの。
いやただのノリなんだろうけど。
変に緊張するってば。


「もう、じゃあいくよ？」
「いけいけ！」


ひょい、という理想通りにはいかず。
おっこいしょ、な手つきだけど、なんとかひっくり返った。


「良い色ー！
そっちもやって。」
「はいはい。」


ワクワクした声で言われると、ハンバーグひっくり返してるだけなのに俺まで楽しくなってる。

２１→←１９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す