褪色する春＿skab

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どうやらただの親切心からの行為、らしい。
やられた方からするとドキドキし過ぎてたまったもんじゃないけど。
だからその手が離れた時、思わず安堵の息を小さく漏らしてしまったのも仕方がないと思う。


「佐久間が助けてくれたお陰だよ。
ありがとう。」


顔、赤くならずに言えてるかな。
それだけが心配。
だってあんな距離で覗き込まれるなんて無理だよ、反則。


「あと、ご馳走になったから片付けくらいは一緒にさせて。
そうしたら帰るから。」


それと、さ。
服を洗って返すからまた会ってもらいたい、とか。
このあと口に出すのは許される？
それからその約束のためにLINEの交換がしたいとか、そんなこと言う計算までしちゃってるんだけど。
それって、佐久間的にはどうなの？
いっぱい佐久間にお願いがあって、いっぱい不安になる。
完全に、人生の未体験ゾーン。


「良いって、そんなの。
こんくらいすぐ洗えるし。」
「でもすごく色々してもらっちゃったし。」
「じゃあ片付けは良いからさ、代わりにまた、俺とアニメ見てよ。」
「アニメ、」
「そ。
阿部ちゃんと見んの楽しかったし、折角第一期から見返し始めたからさ、また付き合って。」
「、うん。」


そんな更にご褒美みたいなこと、あっていいんだろうか。


「じゃあLINE交換しとこ。」


そのセリフまで佐久間から言ってもらえるなんて、夢でも見てるのかな。
目が覚めたら、二日酔いのところからやり直しだったりして。
なんて、そんなことを考えながらLINEを交換する。



佐久間の家からの帰り道、改めてLINEの友達一覧を表示させる。
そこには佐久間という表示と、アイコン。
それにまたへらりと笑みが浮かぶのを抑えきれなかった。


だからこれはやっぱり、人生二度目の恋、なのかな。
そりゃ俺はアニメの中の可愛いキャラクターでも、姉のような生身の女性でもなくて、勿論佐久間に好きになってはもらえないけど。
それでも一度目とは違ってたった一日でこんなにも距離が縮まってしまって。
それがすごく嬉しい。
好きな人の近くにいられるって、こんなにもふわふわした気持ちになるんだ。
だから恋ってやっぱり、淡くて儚い、桜色みたいな気持ちなんだなと思った。

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