【実況者】高嶺の花【アブ】

１８話？視点「５時１５分」 ページ18

目が覚めた

時計を見るとまだ５時１５分だった
だがしかし、この時間に起きるのはいつもの事だ

温もりのある布団から出て洗面所で身なりを整える
いつもの動きやすい服を着るが、今日は少し肌寒いので上着を着る

部屋を出て廊下を歩いていたら忌々しい声が聞こえた
朝からこいつの声を聞くだなんて・・・今日は運が悪いな

誰が見ても綺麗だと言う顔をおもいっきり顰めて壁に手を当てる
足音が聞こえないようにこっそり声の方へ近づく

壁からこっそり顔を出してそいつの顔を見ると笑顔であった
何故笑顔なのか、話を途中からしか聞いていない俺には分からない
だがしかし俺は俺が相当イライラしていることは分かった

ムカつくムカつくムカつく！
親指の爪を噛み、左手で拳を作る

あいつはまだ幸せになろうと言うのか！
俺からなにもかも奪いやがって・・・
俺はお前が幸せになる事を許さない
これ以上何が欲しいって言うんだ、この我が儘野朗

何かに八つ当たりしたい気持ちを抑えて耳を澄ませる

落ち着け・・・こんな所で暴れまわってもただ俺が狂ったようにしか見えない
そうだ、俺は一時の感情だけで行動するような男ではない
大丈夫だ落ち着け
自分の高ぶった感情を冷静に押さえつけ、胸に手を置く
小さく深呼吸をしてまた壁に手をつく

「・・・が、・・・・かった」

距離があるせいかあまり声が聞こえない
だがあいつの笑顔は絶えないようだ

「A・・・・友なんだ・・・・」

A？誰だ？女の名前か？
アイツ・・・女がいたのか？

街の女？それともどこかの国のお嬢様か？
だがまあ、いい情報を得た

男はニヤリと笑う

大切なものを奪われるほど絶望を感じる事はない
あの様子から、相当大切なものらしいしな

男は踵を返してもう一つの階段を降りる
一階に降りて廊下を歩くと、使用人が何人もいた

そして「おはようございます」
と俺に挨拶をしてくる

こいつら、俺みたいな餓鬼のために朝っぱらから働いて笑顔を振りまいているだなんて・・・
頭が狂ってんのか？
仕事だというのは分かっているが・・・やはりいつ見てもこのような仕事はしたくないと思う

「皆さん、おはようございます。いつもご苦労様です」

と、したくもない挨拶をして廊下を歩くと微かだか使用人の会話が聞こえた

「あの笑顔はいつ見ても癒されますね」

「そうだな、使用人にまで気を使うなんて・・・気さくなお方だ」

「そういえばこの前・・・」

男はまたニヤリと笑った

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