【実況者】高嶺の花【アブ】

１話「はじまり」 ページ1

「はぁ・・・新しい仕事探さなくちゃな」

二十歳位の若い女がオレンジ色の髪を揺らしながら暗くてゴミが沸いている道を歩く
A、先月二十歳の誕生日を迎えた
母も父も無くした少女にはお金がなかった
最近までは親が残していたお金を使って生活していたが、もうすずめの涙ほどしかない

世に言うビンボーだ

暗い道を歩いていたら、明るい街が見えた
ある人はパンを売り、ある人は友達とショッピングのようだ

みんなそれぞれ違う事をしているが一つだけ共通している
そう、笑顔だ
悩み事が何一つ無いかのような笑顔

「のんきだな・・・」

そうつぶやいたAの声はある歓声によってかき消された

「キャー！！アブ様よ」
「いつ見てもお美しい・・・」
「アブさーん！！！」

甲高い女の声の方を向くと人がわらわらと集っていた
集まっている人の目は皆、ギラギラしていてまるで狩りをしているようだった

その人ごみの中心にいる人物はこの国の王様の息子、アブという人だった
金色の髪を輝かせながらみんなに笑顔を振りまいている
そりゃ、こんな玉の輿がいるのなら女性は群がるのだろう
なんたって国の頂点なのだから
気に入られたら嫁入りだって夢ではない

「金持ちか・・・」

私は貴族が嫌いだった
別に金持ちに恨みを持っているわけではない
この国の王様が気に食わないだけだ
人間は皆平等とか言っておきながら私のようなお金の無い人たちを見てみぬフリをしている
いや、ただ気づいていないだけか・・・？そうだったらやたら視野が狭いようだな

「もういいや・・・今日は家に帰ろう」

踵を返してさっき来た道を歩く
ちらほらとうずくまっている人や、ガラの悪い連中がいた
その人たちは私の方をチラリと見た後興味がないかのようにすぐにそっぽを向いた

ああいう目つきの悪い連中は貴族から金を奪う事が目的のため
見るからに金を持ってなさそうな私には興味が無いのだ
私はあいつ等は嫌いだ
自分で働いて稼げばいいのに
人を殴って悪いとも思わずに平然としている
ホント、最低な奴らだよ

少し歩いたらなにやら騒がしかった
騒がしいだけならもう慣れている
殴り合い、罵り合いを見るなんて日常茶飯事だからだ
しかし、今回は何か様子が違うようだった

何かと気になった私は様子を見に行った

２話アブ視点「声」→

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