二十四話 ページ25
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A Side
「ん〜、おいしい! お団子はあんこが一番だなあ!」
「みたらしが一番でしょ?」
「えっ、あんこだよ!」
「いや、みたらし!」
「あんこ!」
「みたらし!」
「……やっぱりみたらしも一個食べたい」
「じゃあ僕にも一個ちょうだい?」
「うん!」
私は無一郎くんの、無一郎くんは私のお団子を一つずつ食べてまた頬を落とす。あ、間接キス……。
そう、ここは甘味処。赤いやつに座ってお団子食べたいって言ったのを、無一郎くんが覚えていてくれたんだよね。
私はあんこのお団子が好きなんだけど、無一郎くんはみたらし団子が好きらしい。まあ確かに、みたらし団子もおいしいんだけどね。
それから、町もお散歩した。いろんなお店を見て、ぶらぶらぶらぶら。それがどんなに楽しかったことか。きっと、無一郎くんと一緒だからだ。好きな人と一緒にいるのって、こんなに楽しかったっけ。私は時間を忘れて楽しんだ。
「ただいまー! 楽しかったー!」
帰ってきたのは夕方だった。昨日縁側で話したこと全部、無一郎くんが叶えてくれたんだ。お買い物。おいしいもの食べる。甘味処行く。下駄はく。人間観察する。私のために、全部全部。嬉しかった。初めて会ったときより優しくて、角がとれたみたいだ。ずっと無一郎くんと一緒にいられたらなって思った。
でもね、無一郎くん。あなたはまだ気づいてないかもしれないけどね。私、今夜消える。なんか、そんな感じがするんだ。でもこれはまだ秘密だよ。だって私、無一郎くんと最後まで笑顔でいたいから。
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作者名:Rabbita | 作成日時:2020年5月9日 14時