二十一話 ページ22
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A Side
ああ、やってしまった。完全にやってしまった。確かに無一郎くんのことは好きだ。屋敷に住んでいいって言われたときはすごくドキドキして、ああこれは恋だって思った。稽古の間だって目が合うたびにドキッとして、目を逸らして……。
だけど、だけど! だけどだよ! 何あの告白!? 勢い余って言っちゃったけどさ、もう頭真っ白! 無一郎くんの言葉とか顔とか恥ずかしすぎて見れなかったし、覚えてない! どんな気持ちだったかな、嫌われたかな……。
うーん、やめよ、考えるの。今は鬼だ。無一郎くんのことはそのあとでいい。
「よおし!」
私は屋根を跳びながら、頬をピシャリと叩いた。
「わああああん! お母さああああん!」
村につくと、耳をつんざくような子供の泣き声が聞こえた。急いで声のする方へ向かう。
「どうしたの?」
「お母さああああん! うわああああ!!」
子供は混乱していてまともに会話できる状況ではない。どうしようかと無一郎くんの目を見る。
そのとき、右奥の家から鬼と血の色が漂ってきた。
「あそこにいる」
「わかった。窓から覗いてみる」
「気をつけて。私もすぐ行く」
無一郎くんは私の目を見て頷いた。そして、家に向かっていく。
「ねえ、僕? 私たち、今から悪いやつを倒してくるね。ここで待ってて。いい?」
私は柔らかい笑顔で優しくそう言った。子供は小さな声で「うん」と言ったので、「いい子だね」と頭をなでる。
私は先に家へ向かった無一郎くんに追いつき、作戦を話し合った。
「鬼の色がすごく濃い。もしかしたら十二鬼月がいるかも」
「いや、それなら村はとっくに破壊されてる。でもかなりの数は喰ってるね」
お互いの意見が一致したところでふと気づく。鬼の色に混じって、人の色が見えた。
「家の中にまだ誰かいるみたいだよ」
「……鬼殺隊士だ!」
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作者名:Rabbita | 作成日時:2020年5月9日 14時