十六話 ページ17
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無一郎 Side
〈霞の呼吸・肆ノ型 移流斬り〉
コトッ
「ふう……」
「かっこいー! 無一郎くんちょーかっこいい!」
「この鬼も弱すぎ。次行くよ」
「うん!」
今日の朝、むりやり話題を変えたせいでAと一緒に任務に行くことになってしまった。まあ、自分で誘ったんだからしょうがないんだけど。
最初の方はいつも通りだった。朝と一緒で宇宙の呼吸ってどんな型があるのかとか、Aがどんな戦い方をするのかとか、いろいろ気になってた。
なのに。途中からAに刀を抜いてほしくなくなった。あんなかわいい顔に、傷をつけたくない。そう思うようになったんだ。なぜかはわからない。ただAを守りたい、その一心だった。でも、そう思えば思うほど、僕がやらなければと焦りがつのり、失敗はできないと緊張した。これもきっと“初恋”のせいだろう。
今日はたまたま強い鬼と会わなかったから全て一人で倒せたけど、明日はどうなるかわからない。Aを屋敷において一人で任務に行くべきなのか。それとも、今日と同じようにAが刀を抜く前に斬るべきなのか。はたまた一緒に戦うべきなのか。
考えているうちに屋敷についたので、Aを先に風呂に入れ、僕は縁側に腰を下ろした。
「どうすればいいと思う? 銀子」
「アンナ子ナンテドウデモイイワ! ソノ辺ノヤツラト一緒ヨ!」
「最初はそうだったんだけどね。今はそうもいかないみたいなんだ……」
明るくなり始めた東の空を見ながら、僕はずっとAのことを考えていた。
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作者名:Rabbita | 作成日時:2020年5月9日 14時