腹黒君の嘘恋 ∞ Blue (ページ44)

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ぼんやりと走り去る車両を何度見送っただろう。

見たものが信じられなくて
夢だと思いたくて

頭の中が整理出来なくて
答えを出すのが怖くて

前に進めないでいた。

ポケットの中で、振動するスマホ。

長さ的におそらく電話で

相手はきっと・・

「Aせんぱ～い」

「・・・ナナコ、ちゃん」

どうしてここに？

「電車乗らないんですか？」

安田君と一緒じゃないの？

「ふふっ、ヤス君はいませんよ」

「な、なんで・・」

声に出してない。
どうして私が考えている事がわかるの？

もしかして、私が見てるって気付いてた？

「先輩、見てましたよね？」

髪の毛を耳にかけながら、ナナコちゃんは

「私とヤス君がキスしてる所」

笑みを浮かべて得意げにそう言ったんだ。

やっぱり。
気付いてたんだ・・

それなら余計に混乱する。

何で安田君にキスしたの？
大倉君の事どうなってるの？

私が見てたから・・
ワザと、じゃないよね・・？

「んふふっ、ヤス君ってやっぱりキス上手ですよね？
つい、夢中になっちゃいましたよ」

「ーーっっ」

何でキスした感想を聞かなきゃいけないの？

心が凄い勢いで悲鳴を上げてる。

これ以上、聞きたくないって。

これ以上、ここにはいたくないって。

タイミング良く滑り込んで来た電車。

「ナナコちゃん、ごめん。
私、急いでるんだ」

逃げるように車両へ近付いた私に

「私、先輩に聞きたい事があるんですけど」

「それは、今度にして」

「どうやってヤス君を手に入れたんですか？」

・・・え？

「ヤス君の彼女になるためにたぁくんに近付いたのに先輩のせいでご破算になるところだったんですけどぉ」

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