向かう先は地獄 (ページ8)

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大夢side

Aと付き合ってから数日が経ったが、気持ちとしては浮かれたままだ。

今日は休みなので、理人の家で1日中勉強会をやる。
理人は隣の家に住む幼馴染で、学年が1個下なのもあり、弟みたいに思っている奴だ。

理人の部屋に入れてもらい、自分が持ってきた教科書を広げる。

理人に聞かれたところを教えていると、結構な時間が経っていた。

「大夢くん、教え方が分かりやすいから色々聞いちゃったわ。」
目鼻立ちがハッキリしたクールな印象の顔をくしゃくしゃにして笑う理人を見ると、やっぱり弟みたいだなと思う。
いつもはしっかりしていて、頼りがいがあるからそのギャップがいいんだよな。

「とりあえずやらなきゃいけないところは終わったからさ、大夢くんの話を聞かせてよ。」
こう言って距離を詰める理人に「分かった分かった」と返す。

Aと付き合ったこと、理人には報告した方が良いよな。
いつも仲良くしてくれるから。

「理人。
俺、彼女できた。」
照れる気持ちを抑えながらこう言うと、理人は目を大きく見開いて「えっ」と声を漏らした。

驚いて静止している姿を見ると、手放しで喜んでいる感じではないことが分かる。
むしろ、嫌なことだと捉えている、そんな態度だった。

「え、彼女なんて急に何で？」
こんなことを聞く理人の目には光が宿っていなかった。

「俺がずっと片思いしてた女の子がいて。
その子も俺のことが好きだったみたいで、この前告白してくれたんだよ。
だから、付き合った。」
今の理人に本当のことを話すか迷ったが、変に嘘をつくよりはマシだと考え、あったことをそのまま話した。

「そっか、そうなんだ
でも、大夢くんが傷つけられたとか、嫌なことをされたとか、そういうのがあったら俺に言いなね！
俺が大夢くんの話を聞くから！」
理人は真剣に言っている。
そんなことは分かっている。
しかし、何故か笑いが込み上げてくる。

「大丈夫だよ！
Aはそんな子じゃないし。
それで言ったら理人を頼ることはないかな～」
俺がこんなことを言うと、理人は一瞬落ち込んでから「本当にそうなるといいね」とすぐに笑顔を作った。

この時に感じた違和を見逃していたが、それが良くなかった。
もう少し、理人の気持ちを考えてあげれば良かった。