向かう先は地獄 (ページ41)

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京介side

「俺もあの2人が付き合ったって聞いた時は腹が立った。
ずっとあいつのそばにいたわけやし、あいつのことは何でも分かってるつもりでいたし。
何でAのことを何も知らんあいつと付き合ったんやって思ってた。
だから、髙塚に酷いことをしてきた。
それはお前もわかってると思うけど。」

こう話している後藤からは、確かに悔しさを感じ取れた。
しかし、穏やかな笑みを浮かべていた。
自分の感情を無理に隠そうとせず、自然と出た笑顔だと思えた。

俺には、隣にいるこいつの気持ちが分からなかった。

「でも、あの2人に近づこうとすると悲しくなんねん。
Aは俺のことなんか見ていなくて、髙塚のことしか見えていないんやないかって。
この2人の絆は強固なものなんやないかって思うと、惨めな気持ちになった。
俺にはどうにもできひん、だから諦めた。
お前からしたら信じられへんかも分からんけど。」

後藤はそう言って俺に笑いかけた。
その顔を見ていると、悲しくて泣いてしまいそうだったからすぐに目を逸らした。

Aは最初から大夢のことしか見ていなかった。
俺が何をしようと、それは変わらなかった。

俺だって分かってる。
あの2人の気持ちは、何があっても離れることはないって。
俺が入り込めるような隙はないって。
だけど、どうしてもAのそばにいたかった。
俺のそばにAがいて欲しかった。

「俺だって分かってるよ。
Aの気持ちが変わらないことくらい。
でも、もしかしたら希望があるんじゃないかって思いたくて、それに縋っていないと辛いんだよ。
匠海も突然いなくなって、俺にはAしかいないって思ってたから。
寂しさで頭がおかしくなりそう。」

俺が本音を話していると、後藤が黙って肩を組んできた。

「俺じゃダメ？
んー、最近知りあった奴にこんなこと言われても困るか。」

後藤の声が優しくて、温かくて。
「ダメじゃない」と即答してしまった。

1人でいるよりもマシだという考えもあったが、そばにいてくれるのが後藤なのは有難い話だと思った。

「そっか～。
俺がAのこと忘れさせたるからな～。」

こんなことを言ってチョける後藤に「何言ってんだよ」とツッコんだ。
しかし、嬉しさと安心感から来る涙をボロボロと流してしまった。
そんな俺の肩を優しくさすってくれる後藤。

こいつがいるならこれからの学校生活も大丈夫、と心が軽くなった。