向かう先は地獄 (ページ38)

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京介side

駅前で匠海と遭遇した。
こいつは遠くに引っ越して、もうここには来ないと思っていたのに。

俺は匠海に声を掛けた。

「おー！京介！
久しぶりやな！」
明るくキラキラとした笑顔は今でも変わらない。
匠海の笑顔を見て、安心していた。

小さい頃によく行っていた公園に着いた。
いつもは園内に誰かしらいるはずなのに、今日は誰もいない。
人間だけでなく、鳩もいない。
本当に空っぽという印象を受けた。

匠海は近くのベンチを見つけては、隣同士に座るように言ってきた。

「京介と久々に会えて良かった！
人間関係を新しく構築するって結構しんどいことやから。
幼馴染の顔を見ると安心する。」

匠海は俺を真っ直ぐに見つめ、優しく微笑んだ。

俺も匠海に会いたかった。
匠海がいなくなって、ずっと心が空っぽで、しんどかった。
そう言おうと思った。

「俺、京介に聞きたいことがあんねん。
それで戻ってきたんやけど。」

俺がまだ発していない言葉は、匠海の声によってかき消されてしまった。
少しモヤモヤができてしまったが、匠海の話を聞くことにした。

「京介。
何で俺から花村を奪ったん？
俺が花村を好きやって知ってたよな？
それなのに、いきなり『俺も花村を好きになったから』って言い出して。
俺のこと、応援してくれると思ってたのに。」

悲しそうな顔をする匠海から発せられる言葉は、俺の心にチクチクと突き刺さる。

匠海の言っている通りだ。
最初は匠海とAの恋路を応援するつもりでいた。
しかし、Aのことを知っていく度に好きになって、気持ちを抑えられなくなった。
だから、匠海にあんなことを言った。

酷いことをした自覚はある。
だからこそ、胸が痛かった。

「お前は、俺から好きな人を奪って、髙塚から大事な彼女を奪った。
お前は許されないことをした、分かってんのか！」

匠海は声を荒げ、俺を強く睨みつけた。
こんな匠海の顔、初めて見た。
いつもは穏やかだからか、その分怖く感じる。

「ごめん、本当に悪かった。
許して欲しいだなんて思わない、けどごめん。」

「ごめん、匠海ごめん。」

自分の寝言で目が覚めた。
ベッドの上で上半身だけを起こし、真っ暗になっている自分の部屋を見渡した。

なんだ、あれは夢か。
でも、何で。
俺の心理状態を表しているというのか。

色々と考えていると眠れなくなってしまった。

明日は適当に仮病を使って学校を休もうかな。
そう思って、布団の中で目を瞑った。