向かう先は地獄 (ページ37)

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池﨑くんと目があった私は迷うことなく「池﨑くん！助けて！」と叫んだ
池﨑くんは状況が飲み込めず、困惑しながらもこちらに駆け寄ってきた。

「藤牧先輩引き剥がせばいいですか？」
池﨑くんにこう聞かれ、私は黙って頷いた。

池﨑くんは京介を私から引き剥がすと、壁際に座らせた。
京介は自分を抱きしめるように制服の袖を握って泣き続けていた。

池﨑くんは京介を一瞬だけ心配そうに見てから、こちらに視線を移した。

「藤牧先輩のことは心配ですけど、今日は花村先輩に話があって来たんです。
2人で話したいので移動してもいいですか？」
こう聞いてくる池﨑くんの表情は、この間とは別人のように違う。
怒りとか悲しみとかそんな感情は一切なく、穏やかな印象を受けた。

校舎裏まで移動すると池﨑くんが突然頭を下げ始めた。

「お願いします！
1度だけでいいです。
大夢くんと話してもらえませんか？」

池﨑くんの言葉は想定外のもので、私は驚いて硬直してしまった。

「いや、勝手なこと言ってるのは分かってます。
大夢くんに近づくなって言ったのは俺なんで。
あれは大夢くんを守るために言ったんです。
でも、そのせいで大夢くんが悩んでるから。」

「ちょっと待って、どういうこと？」

眉間に皺を寄せ、悩みながら話している池﨑くんに対し、反射的にこう言ってしまった。

「大夢くん、今でも花村先輩のこと好きみたいで、別れたことも本当は後悔してるんです。
もう一度だけ話をしたいと思ってるんですけど、周りのガードが固くて中々難しいみたいなんです。
なので、花村先輩の方から声をかけてもらえませんか。」

池﨑くんの話を聞いて、正直驚いている。
大夢の中に、私はもういないと思っていたから。
今でも好きでいてくれて、関係修復を望んでいる。
私と同じ気持ちなんだ、と嬉しくなった。

「それって、本当の話？」
しかし、舞い上がってはいけないと思い、こう聞いてみた。
池﨑くんは静かに頷いた。

「そっか。
明日、大夢に話してみる。
私も同じ気持ちだよって。」

私はこう言い残してその場から離れた。

大夢がまだ私のことを好きだと知って、ニヤケてしまうくらい嬉しかった。
私の望みが叶うかもしれないと本気で思った。