向かう先は地獄 (ページ36)

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尾崎くんが退学してから1週間が経った頃、京介が久しぶりに学校に来た。

1週間も休んでいたので、クラスメイトたちはザワザワとしていた。

京介からいつもの明るさや元気を感じ取れないので、相当落ち込んでいるんだろうなと思う。

何となく大夢に目をやると、彼も心配そうに京介を見ていた。
あんなことがあったのに優しいなと思った。

この日の放課後、京介に呼び出された。
過去の出来事を思い出すと嫌な予感しかしないが、話し合いに応じることにした。

屋上のドアの前までたどり着くと、京介は何かを思い詰めたような顔で立ち止まった。

「何？」
目の前にいる京介の姿に困惑した私はこう声を掛ける。

「A。
俺にはもうAしかいない。
匠海が突然いなくなって、普段から俺のそばにいてくれた人がいなくなって、ショックで心が壊れそうなんだよ。
だから、Aがそばにいて欲しい。 Aがいい。」

向かい合った状態で私の肩に頭を預ける京介。
嗚咽を漏らしていて、涙が床にポタポタと落ちていく。
この出来事は京介にとって、悲しくて、痛くて、苦しいことなんだろうなと思う。

しかし、だからと言って過去の行いを忘れたわけじゃない。
それに、大夢への気持ちも消えてはいない。
もっと一緒にいたかったな、どうするのが正解なんだろう、そんなことばかりを考えているくらいだ。
申し訳ないが、京介の気持ちを受け取ることができない。

「悪いけど、京介の気持ちには応えられない。
あんなことがあったし、私が全面的に悪いけど、それでも大夢のことが好きなの。
今でもやり直したいって思ってる。
私の心の中には大夢しかいないんだよ。」

私は京介を引き剥がそうとした。
しかし、制服の袖をキュッと握られているため、離れることはかなわなかった。

泣き続ける京介。
困り果てる私。
重い空気に包まれていた。

「どうしようかな。」
為す術なくこう呟いた。

「花村先輩！」
階段の下の方から声が聞こえてきた。
低音のハスキーボイス。
その声に聞き覚えがあった。

声のした方へ目線を移すと、そこには目を大きく見開いて驚いている様子の池﨑くんが立っていた。