向かう先は地獄 (ページ35)

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匠海side

「なぁ、匠海。
お前、好きな人ができただろ」
京介がいきなりこんなことを言い始めた。
楽しそうにニヤニヤと笑っていて、何でそんなに関心を向けられるのかが分からなかった。

「仮に俺に好きな人ができたとして、何でお前が楽しそうにしてんねん。」
俺がこう言うと、京介はキョトンとした顔をしていた。

「だってさ、中学の時にモテまくったはいいけど、告ってきた女子全員振って泣かせてきた匠海に好きな人ができたんだよ？
そりゃ興味津々に決まってんじゃん！」
京介はウキウキと楽しそうな態度でこう言った。

「で、お前が好きなのは花村だろ。」
京介は俺と距離を詰め、目線の先にいる花村に指をさした。
こいつの大きな目で見つめられ、逃がさないぞという圧をかけられている気がした。

誤魔化すことを諦めた俺は「うん、花村が好き」と答えた。

「そっかぁ、匠海の初恋か～。
俺、匠海と花村がくっ付くように協力するよ！」

俺は「そんなんええよ」と断ったが、京介がどうしてもと聞かず、協力してもらっていた。

それがいつの間にか、俺が京介を応援する流れへと変わっていった。

「俺、花村を好きになっちゃった。
できれば匠海にも協力して欲しいんだけど。」

最初にこう言われた時は驚いたけど、それはそれでいいと思っていた。

京介は決して強くはないから、支える人が必要だと考えていて、それが1人でも増えれば喜ばしいことだと思っていた。

最初は上手くいっても、いかなくても、俺があいつのそばにいればいいと考えていたが、そういうわけにもいかなくなった。

親の転勤が決まったのだ。
京介が落ち込んでいる時、すぐに駆けつけて隣で慰めるというのができなくなった。
絶対に京介と花村をくっ付けないといけない、そんな状況になった。

俺はとにかく必死だった。
花村の気持ちを無視していた。
そして、自分の気持ちも無視していた。

京介とは付き合わない。
そうはっきり言われたとき、俺が今まで我慢していた感情が溢れ出した。

そして、花村との思い出が欲しくなった。
もう二度と、会えなくなると思ったから。

花村
俺の感情だけで迷惑かけてごめんな。

京介
最後まで協力できなくて、裏切ってごめんな。

2人に対して申し訳ない気持ちを抱えたまま、生まれ育った場所を離れた。