向かう先は地獄 (ページ34)

今日:28 hit、昨日:74 hit、合計:32,166 hit

34 ページ34

匠海side

入学当初、俺はクラスの中で、もっと言うと学年の中で孤立していた。

理由は「尾崎は女遊びをしている」というデマを広められたから。
そのデマの内容が中々ヘビーなもので、誰もが俺を軽蔑するような状況だった。

「うわ、尾崎じゃん」

「勘弁してくれよ、迷惑なんだけど」

「あの噂がガチならキモイよな」

クラスの男子生徒が数人で固まって俺の噂話をしていた。
俺に向けられた冷たい視線と嘲笑によって、心が痛くなったが、何も気にしていないように振舞った。

「あのさ」
花村が男子生徒のグループに声をかけていた。

「そういうの、やめた方がいいよ。
大体、尾崎くん本人に『本当に女遊びしてるんですか？』って確認したの？
どうせあんた達のことだから確かめてないんでしょ。
こっちも聞いてて気分悪いからやめて。」

花村の表情を見る限り、かなり怒っている。
俺のために怒ってくれて、声を上げてくれる人がいることに驚いたと共に嬉しくなった。

「ねぇ！花村！」
放課後、花村を見かけたので声をかけた。
男子生徒たちに怒ってくれたお礼を言うためだ。

「俺のことを噂してた男子たちを止めてくれてありがとう。
あんなこと言ってくれる人、いなかったから。
花村がああ言ってくれて本当に嬉しかったよ。」
俺がこう言うと、花村は困ったように笑った。

「別に尾崎くんのためじゃないんだけどな。
私が嫌だったから言っただけだよ。」

「それでも、俺は嬉しかった！」
俺は花村の言葉をかき消すようにこう言った。

「私、前からずっと思ってたんだけど
学級委員になってクラスを仕切ったらいいんじゃないかな。
ビシバシ言ってる姿を見たら、誰もナメたこと言わなくなると思うよ。」

花村は少し考え込んだ後にこんなことを言い出した。
クラスの奴らは俺に仕切られたくないだろ、と言おうとしたが、このままでは状況は変わらないと思った。
1度嫌われているのでどう思われても関係ないと思い、学級委員になった。

状況は好転し、俺にも友人ができた。
花村に対する感謝の気持ちがより強くなった。

そして、花村を好きになっていった。