向かう先は地獄 (ページ32)

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京介side

匠海を廊下に連れ出した。
理由はもちろんAのこと。

俺とAをくっ付けようと必死になっているが、その理由が分からない。
話を聞き出そうとした。

「匠海、どういうつもりだよ。
Aを怒らせてまであんなことしてさ。」
俺がこう言うと、匠海はキョトンとした顔で俺を見つめた。

「俺はただ、京介と花村をくっ付けようとしただけやで。」
あくまで普通の顔をして答える匠海。

しかし、肝心なところを話してくれなかった。

「俺はその理由を聞いてるんだよ。」
怒りの感情を込めて言うと、匠海の目は少し揺らいだ気がした。
動揺していても絶対に隠したい何かがあるのでは、と思う態度だった。

「理由？そんなんないよ。
京介が幸せになれたらいいなって、京介のそばにいてくれる人が増えたらいいなって、それだけ。」

またはぐらかされた。
匠海はどうしても理由を話したくないみたいだ。

俺に話せないことなのか。

俺は何年も匠海の隣にいるのにそれでも頼ってもらえないのか。

匠海にとっての俺は何なんだ。

そんなことをぐるぐると考えていると寂しい気持ちになった。

ネガティブに考え過ぎなのは分かっている。
しかし、俺だって辛いのだ。
完全に俺のせいだけど、好きな人には拒絶されるし、匠海には隠し事をされるし、こんな状況を好ましく思うやつなんていないだろう。

俺のこの暗い気持ちはどうしたら解決するのか。
いくら考えても分からなかった。

どんなに悪い状況に置かれても、やっぱりAを好きな気持ちは無くならない。
Aと仲直りして、普通に話して、できれば付き合いたいし、俺のそばにいて欲しい。

そんなことは叶うと思っていないし、口にするなんてもってのほかだと思っている。

少しだけでもいいから状況が好転すればいいなと思っている。
何も望めないとしんどいだけだから。

自分を守るために小さな希望を探している。