向かう先は地獄 (ページ30)

今日:44 hit、昨日:74 hit、合計:32,182 hit

30 ページ30

大夢side

放課後、理人の家で勉強をしていた時にこんなことを言われた。

「大夢くん、あの人と別れて正解だよ。
だってあの人、大夢くんと別れてすぐのタイミングで新しい男を見つけてるみたいだし。
2人が別れる原因になった藤牧先輩じゃなくて、後藤先輩なんだけど。
あの人やっぱりおかしいよ。」

理人の表情から心配してくれているのは伝わる。
俺を思っての発言だというのも分かってる。

しかし、そんな理人の発言に怒りを覚えた。

「理人が心配してくれてるのは分かるよ。
でも、その発言は許せない。」

いつもより低く、地を這うような声で言うと、理人は目を見開いて驚いたような表情を見せた。
予想していた反応と違うからだろう。
しかし、俺の気持ちは理人には共感してもらえないと分かっているから、そのまま話を続けた。

「確かにAは俺を傷つけたよ。
けど、それは俺も同じだから。
あんな言い方して、一方的に別れたけど、本当はめちゃくちゃ後悔してる。
どうしたらもっと一緒にいれたのかなって考えちゃう。
Aは俺にとっての大事な人、それは今でも変わらない。
だから、理人にそんな言い方されたくない。」

俺の気持ちを全て話すと「ごめん」と小さな声で謝る理人。
シュンと落ち込む姿を見て、少し言い過ぎたかと反省した。

「大夢くんは変わったんだね。
今の話を聞いてよく分かったよ。
今までは俺ら2人でも平気だったけど、そうじゃなくなった。
大夢くんには花村先輩が必要なんだよね。」

今度は優しい表情を見せる理人に対して黙って頷いた。

「それを花村先輩に伝えたらいいんじゃない？
成功する保証はないけど。」

理人がこんなことを言ってくれるとは思いもしなくて、嬉しくなった。
その嬉しさを爆発させるように笑顔で大きく頷いた。

「大夢くん、久々に笑った。
花村先輩と別れてからずっとムスッとしてたから。」

理人にこう言われ、照れくさくなった。
しかし、Aと別れてからはずっとネガティブな感情でいたから。
ポジティブな感情を肌で感じたのは久しぶりだった。

タイミングを見つけて、Aときちんと話そうと決めた。