向かう先は地獄 (ページ29)

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昨日、池﨑くんに言われたこと、ショックだったな。

大夢くんを傷つけたのは私。

そんなことは分かっている。
大夢くんを裏切って、深い傷を負わせたことはよく分かっている。
しかし、他人から言われると、よりダメージを食らう。
耳を塞ぎたくなったが、そこから逃げてはいけないと耐えることで必死だった。

幼馴染のお兄さんである大夢を守りたいと必死になる池﨑くんの気持ちも分かる。
だから、大夢に金輪際近づくなと頭を下げたことも理解できる。
分かってはいるけど、ショックを受けずにはいられなかった。

教室に入ると、昨日と同じように不機嫌そうに勉強する大夢。
大夢をこうしたのは私なんだなと罪悪感が湧いてきた。

「花村、ちょっといい？
話したいことがあるんやけど。」

私に声をかけてきたのは尾崎くんだった。
彼がわざわざ私と話す理由は何だろうと疑問に思いながら、尾崎くんの後をついて行く。

「花村、髙塚と別れたって聞いたんやけど」
尾崎くんが恐る恐るこう聞いてきた。

嘘をつく理由もないので、ただ頷いた。

「そしたら、京介と付き合ってくれるよな？」

「は？」
尾崎くんの言葉を聞いて、声を出さずにはいられなかった。

京介のせいで大夢と別れることになったのに。
それを尾崎くんも知っているはずなのに、なぜこんなことを言えるのか、不思議でたまらなかった。

「京介には、支える人が必要なんや。
今までは俺がその役目をやってきた。
京介が落ち込む度にそばにいて、気持ちが落ち着くまで慰めた。
俺らはそうやって生きてきた。

俺、この学校辞めんねん。
親の転勤が決まって、引越し先の学校に通うことになった。
だから、今までみたいに京介のそばにいることはできない。
花村に京介を支えて欲しいねん。」

尾崎くんの事情はよく分かった。
しかし、突然こんなことを言われても困るし、どうして私が京介のそばにいて支えなきゃいけないの。
私に選択権はないの。
そんなことを思っていたが、ある疑問が浮かんできた。

「尾崎くんが転校すること、京介は知ってるの？」
私が疑問を口にすると、尾崎くんの顔が暗くなる。

「言ってない」

尾崎くんの答えに「は？それってまずいんじゃないの？」と驚きのリアクションをとってしまう。

「花村が京介を支えるって約束してくれなきゃ言えない。」

尾崎くんはそう言ってるけど、私はそんな約束できない。

京介からすれば、突然親友がいなくなるという状態になるだろう。
それを危惧していた。