向かう先は地獄 (ページ28)

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理人side

花村先輩が後藤先輩に抱きしめられているところを見てしまった。

大夢くんはあんなに傷ついていたというのに、あいつはもう次の相手を見つけているのか。
それを理不尽だと感じ、怒りの感情が膨れ上がった。

「返事はゆっくりでいいから。」
そう言って後藤先輩は帰っていった。

その場に花村先輩だけが残ったタイミングで非常階段へ移動する。
花村先輩は俺を見て驚いたような表情を見せた。

「あなた、何なんですか。」

どんな言葉を口にしようか、それを考える前に発言していた。
勢いだけで口を開いた感じだった。

「え？」
花村先輩はわけが分からないという顔をしていた。
それを見て、怒りの感情が更に大きくなる。

「大夢くんは、あなたと別れることになって、傷ついてるし、落ち込んでるし、ずっと暗いままなんです。
もう、本当に見てられないレベルなんです。
それなのにあなたは次の相手を見つけて、幸せそうにしてるなんてこんなことあります？
だって、あなたは大夢くんを傷つけたんですよ。」

俺は怒りによって涙を流し、花村先輩を責めるような言葉を連射していた。
花村先輩は何も言い返すことはなく、ただ悲しそうな顔をしていた。

「お願いします。
大夢くんに金輪際近づかないでください。
大夢くんが傷つくところを見るのは嫌なんです。
なので、お願いします。」

大夢くんがひどく落ち込んでいる姿を思い浮かべ、心が痛くなった。
そして、花村先輩に頭を下げた。

これでいい。
大夢くんと花村先輩が会わなければいい。
そしたら大夢くんは立ち直って、以前のように元気な姿を見せてくれるはず。

そして、花村先輩と付き合う前のようになれる。

子供の頃から大夢くんとずっと一緒で、ずっと2人きりでいた。
2人きりでも平気だった。
平気なはずなんだよ。

だけど、花村先輩が現れたことによって大夢くんは変わった。
以前のようにはいかなくなった。
俺のところには戻ってきてくれない。
そんなことは分かっている。

しかし、その現実を受け入れられなかった。