向かう先は地獄 (ページ27)

今日:35 hit、昨日:74 hit、合計:32,173 hit

27 ページ27

大夢と別れ、無気力な状態で授業を受けていた。

さっさと家に帰ろうと教室を出ると、威尊に声をかけられた。
そして、人気のない非常階段まで連れて行かれる。
京介のこともあったので、正直に言うと嫌な予感しかしなかった。

「彼氏と別れたんやろ？大丈夫？」
威尊は優しく穏やかな声でこう聞いてきた。

大丈夫なわけがないと首を横に振る。
威尊はそんな私を見て「そうだよな～」と言った。

「ちなみに、Aと髙塚が別れたのって俺のせいやったりする？
髙塚に酷いこと言っちゃったし。」
威尊は申し訳なさそうな顔をしながら別れた理由を聞いてくる。
威尊なりに責任を感じているのかもしれないが、直接の理由ではない。
その旨を威尊に伝えた。

「良かった。
Aと髙塚が付き合って、ムカついたのはホンマのことやけど、もしかしたら俺が原因かもしれないって考えると恐かったから。」
威尊はそう言って安堵の表情を見せた。

いや、待てよ。
こんな話をするためにわざわざ呼び出したのか。
威尊に限ってそんなことはありえない。
絶対に何か目的があるはず。

「威尊、用事って何？
まさかこれだけのために呼び出したわけじゃないよね。
威尊のことだからまだ何かあるんじゃないの？」
私がこう言うと、威尊は「バレたか～」と笑う。

「俺、Aのことが好き。
子供の頃からずっと好きやった。
それで、ずっと間違えてきた。
最初からこうやって気持ち伝えてたらもっと違う未来があったのかなって後悔したけど、もう後悔したくない。
俺は本気でAが好き、付き合って欲しい。」

私は威尊の気持ちに気づかなかった。
私の周りから男の子がいなくなるのは、ただ単に私に対する意地悪だと思っていた。
大夢と付き合って怒っていたのもそういうことだと思っていた。
それが、全て私への想いによる行動だったとは。

驚きと威尊の気持ちに応えられない申し訳なさで涙が溢れ出した。

ボロボロと泣く私をギュッと抱きしめる威尊。
頭を優しく撫でてくれた。

「今はまだ、髙塚のことを好きなままでいいよ。
でも、いつかは俺のことを男として見て欲しい。」

威尊の優しさに包まれる私。
それなのに威尊を振ろうとしている私。

自分の残酷さに気づいて、涙が止まらなくなった。