向かう先は地獄 (ページ21)

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花火大会当日

今日は浴衣を着てきたくらいだし、完全に浮かれているなぁと我ながら思う。

大夢、喜んでくれたらいいな。
贅沢なことを言うと「可愛い」って言って欲しいな。
そんなことばかりを思ってしまう。

1番最後に到着したのは私だった。

「お待たせ！」
もう既に集まっていた大夢、京介、尾崎くんに声を掛けた。

京介は「遅いよ～」と口を尖らせ、尾崎くんは私に対して無感情に近いリアクションを見せた。

大夢は私を見てニコッと笑う。

「浴衣、可愛いね」
自分で言ったことに対して照れ笑いをする大夢。

私は大夢から1番求めていた言葉を貰えて心の中でガッツポーズをしていた。
それだけでも、浴衣を着てきて良かったと思った。

「じゃあ、そろそろ行こうか」
尾崎くんの言葉を合図に縁日の方へ移動を始める。

4人で固まってはいたが、京介と尾崎くん、私と大夢の2つに分裂しているような雰囲気はあった。
正直に言うと、大夢と2人で来たかった場所なので、私としては満足していた。

そろそろ花火が打ち上がるというのに、大夢、尾崎くんとはぐれてしまった。

「とりあえずここにいよ。
2人には居場所教えとくから。」

一緒にいる京介と適当な場所に座ることにした。
花火は見えそうだけど、人気のない場所。
良い場所を見つけたなと京介に感心していた。

黒が強い紺色の空に色とりどりの花火が打ち上がる。
美しい花火に心を奪われていると、突然手を握られた。

驚いた勢いで京介を見ると、熱を帯びた瞳で見つめられた。
数秒間、お互いの視線がぴったりと合う。

京介に唇を奪われた。
直に伝わってくる温度で現実味を帯びてくる。

私は京介の体を両手で押して、無理やり引き剥がす。

「俺、本当はAのことが好きだった。
ずっと前から、Aが大夢を好きになる前から好きだった。
2人が付き合うことになって、最初は応援しようとしてたけど、やっぱり無理だった。
本音を言うと大夢じゃなくて俺と付き合って欲しい。」

私は京介の話を一通り聞いてから、彼の顔に平手打ちをした。

「帰る」

私は会場から出ていき、家まで1人で帰る。
こんな醜い姿、絶対に大夢に見られたくない。

歩きながら大声で泣くなんて初めてだ。
私を心配そうに見る周りの視線のことも気にしていられなかった。

京介のやったことは絶対に許さない。
京介なんか大嫌い。

そう思ったら涙が止まらなくなった。