向かう先は地獄 (ページ20)

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京介side

俺は匠海の腕を引っ張って廊下に連れ出した。

「匠海、お前どういうつもりだよ！
いきなりあんなことを言って。」

俺が声を荒らげると、キョトンとして見せる匠海。

「京介が花村と距離を縮めるチャンスや。
俺だって、京介がちゃんと自分の気持ちを整理できてるんやったらこんなこと言わない。
けど、全然そんな感じやない。
むしろ、迷ってるというか、できることなら花村を奪ってやりたい、そんな雰囲気やったから。
幼馴染ナメるのもいい加減にしろよ。」

匠海に言われたことは図星だ。
"Aを自分のものにしたい"という欲求は確かに出てきている。
それを常識や道徳で何とか押し殺している感じだった。
しかし、俺の気持ちを押さえつけるものが無くなってしまったら、いわゆる"無敵の人"になってしまったら、何をしでかすかは分からない。

自分自身というとは1番制御しやすいように思えて、もしかしたら1番制御が難しいものかもしれない。
特に、自分自身の気持ちが分からない俺の場合、その危険性が高くなる。

「あのな、一緒は行くけど、Aにどうこうとか絶対にないからな。
大夢が傷つくのが目に見えてるだろ。
誰かを傷つけてまで自分の気持ちを押し通そうとは思ってないから。」
俺の中にある理性をフル稼働させ、この言葉を口にした。

「俺がどうにかして花村と2人きりになる状況を作るからな」

匠海が次に出した言葉は、俺の話を全て無視したようなものだった。

「は？俺の話聞いてた？」

「このままやとホンマに後悔するで。
特に京介には何がなんでも花村を自分のものにして欲しい。
そのためなら俺は何でもするから。」

俺の言葉を遮るように匠海が話し出す。
大夢とAが付き合い出してから、ずっとこの調子だ。

何が匠海をそうさせているのか、聞きたかったけど聞けなかった。
何となく、聞くのが怖かった。