向かう先は地獄 (ページ18)

今日:7 hit、昨日:48 hit、合計:32,193 hit

18 ページ18

京介side

Aと大夢の会話を聞いてしまった。

傷つくだけだと分かっているのに。

大夢にもあんなことを言ったし、2人の仲が深まることは良いことなはずのに、喜べない。

本当に応援したい気持ちがあるのに、純粋な気持ちで見守ることができない。

自分自身でも俺の気持ちはよく分からない。

大夢は友達。
だからあいつのことはちゃんと応援したい。
あいつに良いことがあったらちゃんと喜びたい。
あいつの助けになりたい。

その気持ちは確かにある。

でも、俺はAのことが好き。
この気持ちが無くなることはない。
理性で押さえつけられる気もしない。
だから辛い。

たまたま人気のない場所にいる。
これだけが救いだ。

俺はその場でしゃがみ込んで、ダムが決壊したように泣いた。

嗚咽が止まらず、息苦しい。
足りない酸素を取り入れようと呼吸が早くなる。
声を押し殺す余裕などなかった。

この時の俺は何も考えていなかった。
頭が真っ白で空っぽだったと思う。
ただ、感情を吐き出すことで必死だった。

思い切り泣いてスッキリした俺は、帰宅のために移動を始めた。

自宅に到着し、中に入ろうとした。

「京介！」

後ろから匠海に声をかけられた。

「お前、今までどこ行ってたんや。
さっきおばさんから連絡があって、これから京介のこと探しに行くところやったけど、ホンマに良かった。」

匠海は一瞬だけ安堵の表情を見せるが、心配そうな表情に変わる。
そして、俺に近づく。

「目、赤なってるやん。
1人で泣いてたんやろ。
理由は詳しく聞かないけど、京介は強くないんやから泣くなら俺の前でって言ったよな。
何も分からないと不安やから。
まぁ、見つかって良かったわ。」

匠海はそう言って自分の家に戻って行った。

この日がきっかけで、俺の心の中で"Aを俺のものにしたい"という気持ちが固まりつつある。
そして、大夢を応援する気持ちが段々と薄れていった。