向かう先は地獄 (ページ15)

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大夢side

放課後、さっさと掃除を終わらせてAと帰ろうと思い、床をほうきで掃いていた。

「髙塚く～ん」
教室のドアの方から声が聞こえてきた。

身長は170後半くらい、全体的に甘めな印象の顔をしている男の子。
彼は笑っていて、普通だったら"甘いマスクから繰り出される笑顔"なんて言われると思うが、俺にはそう感じなかった。
目の奥が笑っていなくて、何となく憎しみが込められているような顔。
でも、彼の名前も知らないし、恨まれる理由が分からない。
俺はその場で停止していた。

彼の顔は瞬時に怒りを剥き出しにしたものへと変わり、こちらへと近づいてくる。
怖い。
そう思って身を縮こませた。

胸ぐらを捕まれ、隙間が数センチという距離まで顔を近づけられた。

「何でお前やねん！
何でお前がAと付き合ってんねん！」
目の前の彼が声を荒げたことで、Aと親密な関係であることが分かる。

彼もAのことが好きだった？
それで俺に怒ってる？
だとしてもすごく怖い。

俺は怯えながらAの顔を見ることしかできなかった。

「お前とAじゃ、全然釣り合ってないねん！
どこかのイケメンと付き合うならまだしも、何でお前みたいな奴が。
お前ふざけんなや！」

俺のシャツを握る手の力が強くなる。
恐怖で声が出ない。
誰か助けて。
心の中でそう祈った。

「はいはい、ストップ！」

教室の外に目を向けると、そこには京介が立っていた。

「それ、先生に見つかったらまずいんじゃね？
いじめか暴力行為で停学か退学になるだろ。」
京介の一言でシャツを掴んでいた手が離れた。

「お前、後藤威尊だっけ？
Aと幼馴染の。
お前に協力して、大夢に雑用押し付けてた奴に聞き出したんだよ。
何、子供の頃からAに片思いをしてて、そのAと付き合った大夢が恨めしくてこんなことしたんだ。」

"後藤威尊"と呼ばれた彼は京介を睨みつける。

「子供の頃から好きだったんだろ？
だったらいくらでも告るチャンスなんてあっただろ。
それなのにお前は告らなくて、気持ちを伝えあった2人にこんなことをする。
理不尽にも程があるだろ。」

京介にこんなことを言われ、返す言葉も見つからず、走って逃げていった後藤くん。

後藤くんがいなくなると「いやぁ～、マジ怖かった」と笑う京介。
俺はそんな京介を見て泣きそうになってしまった。

人に守ってもらえたのは初めてだったから。
京介みたいな人と関わったのは初めてだったから。