向かう先は地獄 (ページ11)

今日:13 hit、昨日:48 hit、合計:32,199 hit

11 ページ11

水族館の最寄り駅に到着する。

A今、駅に着いた!

大夢にメッセージを送ると、すぐに返信が来た。

たかつか時計台の近くにいるよ

大夢から送られてきた場所付近まで行ってみる。

見つけた。
私服の大夢もかっこいいな。
ずっと眺めていたいところだけど、それだと大夢を待たせてしまう。

「大夢！お待たせ！」
私は大夢のところへと駆け寄る。

「あ、A！
待ってたよ～」
大夢は私の姿を瞬間、パッと咲くように笑った。

「じゃあ、行こうか。」
そう言って私の手を取って優しく握る大夢。

恋人同士では当たり前のことでも、私にとっては初めてのことで、心臓がうるさくなっていた。
私の心拍音、大夢にバレてるのかな。
そんなことを1人で考えていた。

大夢とのデートは楽しかった。
水槽の中にいる魚を見ているときの大夢の顔はキラキラと輝いていた。
初めて見る一面に胸を高鳴らせていた。
一日中ドキドキしっぱなしでデートどころじゃなかったなと1人で頭を抱えていた。

「今日は楽しかったよ！誘ってくれてありがとう！」

夜遅いからと私を家まで送ってくれた大夢。
かっこいいし、一緒にいるとドキドキするのに、その上優しい。
私の彼氏は最高だなとつくづく思う。

「もう少しAと一緒にいたいところだけど、俺らは高校生だしさすがに無理だよね。」

大夢の寂しそうな顔を見ると「私ももう少し一緒にいたい」と言ってしまいたくなるが、これ以上大夢を引き止めるわけにもいかないと何も言えずにいた。

「でも、このまま帰るのは寂しいな。」
そう言って私の右頬を左手でそっと触れる大夢。
そこから伝わる体温でまた心拍数が上がる。

大夢の顔が近づいて来るので反射的に目を瞑る。
そして、唇に柔らかいものが触れた。
私はすぐに何が起こったのかを理解した。
それからは顔が熱くなり、心がドキドキしていて、とにかく平常心ではいられなかった。

「好きだよ、A。」

私をまっすぐに見つめる大夢の顔にも緊張感があった。
私と同じようにドキドキしているんだなと何故か安心した。

「じゃ、また学校で。」
そう言って大夢は駅に向かって歩いていく。

小さくなっていく背中を名残惜しく見送っていた。

さっきまで一緒にいたのに、もう会いたくなってる。
早く月曜日にならないかな。
そう思って家の中に入った。