受け止めきれない現実に…�� ページ40
やがて、医師から智の様子を伺う許可が出て、俺は智のいる病室のドアをガラガラとスライドさせた。
今だけは、個室の病室で寝かされている。
静かに病室へ入っていくと、ベッドで酸素マスクをつけて静かに眠っている智のそばへ寄った。
腕には点滴の管が繋がれている。
ベッドの上にいる智が静か過ぎて、さっきまで言い合いしていたのが嘘のようだ。
俺は立ったまま智の顔を見下ろしながら、さっきの医師の言葉を思い出していた。
『あと1ヶ月も厳しいかもしれない』
その言葉にショックを受け泣き崩れる俺に、更に残酷な言葉をかけられた。
『次に発作が起きた時は…覚悟しておいてください』
それはつまり…
次に発作が起きたら、智は死ぬってことなんだ。
嫌だ…
嫌だよ…
嫌だよ、智…
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
智が死ぬなんてっ…嫌だっっ…
拳をグッと握りしめ、唇を噛み締めた。
ギュッと瞑った目から、ポタポタと涙がとめどなくこぼれ落ちる。
覚悟は出来てるだなんて、どの口が言ってんだよっ…
受け止めるだとか、辛い現実と向き合うだとか、隣で見送るだとか、最期まで一緒にいるだとか。
散々偉そうなことを言ってきたくせに、いざ目前にしたら、このザマじゃねぇかっ…
やっぱり覚悟なんて出来るわけがない。
受け入れることなんて出来ないよ。
だってっ…
最愛の人が、この世からもういなくなっちゃうんだから。
俺には耐えられない。
無理。
怖い…
怖い…
怖い…
怖くて怖くて、どうにかなりそうだよ…
悲しくて悲しくて、息が止まりそうだよ…
息が苦しいのは、智の方なのにね…
胸を押さえて苦しんでいる智の姿を見たくない。
智が弱っていく姿を見たくない。
もうこれ以上、智と一緒にはいられない。
和「…ごめん智っっ…ごめんっ…ごめんねっ…」
涙を拭い、智には指一本触れることなく、智が目を覚ます前に、俺は静かに病室を出た。
止まらない涙を拭いながら病院を出て行き。
そして。
そのまま病院には戻らなかった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年8月8日 16時
