濃藍のうた〔N O〕 (ページ38)

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受け止めきれない現実に…② ページ38

和「…いい加減にしろよ」

智「えっ」

和「最後くらい、最後くらい、てさ。なんで、そういうこと言うんだよ」

智「………」

智は求人誌を持ったまま、目を丸くして俺を見ている。

和「だいたいさ、そんな状態でバイトって何考えてんだよ。お前、分かってんの？いつ倒れるかも分かんない状態のくせにさ。バイト中に倒れて、そのまま…なんてことになったら、どうすんだよ！！」

興奮気味に捲し立てる自分。

こんな風に喧嘩腰に言うのは久々だった。

一方の智は、相変わらず平然とした顔をしている。

今にもバトルが始まるであろう俺達の様子が、懐かしいとさえ感じた。

智「それは仕方ないよ」

和「はっ！？」

智「そん時は、そん時だよ」

ケロっとした顔で言う智の言葉に、怒りなのか悲しみなのか分からない感情に支配され、智の持っている求人誌をバッと勢いよく奪った。

和「ふざけんなッ！！」

隣の家にまで聞こえてるんじゃないかと思うくらい、俺の怒鳴り声が響いた。

求人誌を奪われた智は、俺の剣幕な様子にさすがにヤバイと思ったのか、慌てたように立ち上がった。

智「カズ」

和「そん時は、そん時だ！？ふざけんなッ！！本当にそうなったら、どうなると思ってんだよ！！」

智「………」

和「お前はいいよ、もうその先、苦しむことはないんだから！だけど、遺された俺の気持ちは、どうなるんだよ！！」

智「………」

和「どうせお前は、俺の気持ちなんて考えてねーんだろ？いつ、お前がいなくなるか毎日毎日怯えてる俺の気持ちなんか、分かんねぇだろッ！？」

智「カズっ…！」

和「どうせもう俺のことなんて、どうでもいいんだろッ！！」

目の前にいる智に向かって、ずっと胸の内に秘めていた心の叫びを、思いきり吐き出した。

智「違う、カズ」

和「違くねーよッ！！」

智「俺はっ…！」

そこまで言ったところで、突然智の動きが止まった。

智「うっ…！」

苦しそうな呻き声を上げながら、智が胸を押さえた。

和「さとしっ！？」

智「うううっ…！」

胸を押さえながら、やがて膝をついて、床にうずくまった。

和「さとしっ！どうしたっ！？苦しいのかっ！？さとしっ！」

智「はあっ、はあっ…うぐっ…！」

和「さとしぃッ！！！」

苦しそうに胸を押さえてうずくまる智を支えながら、慌ててポケットからスマホを取り出した。

救急車を呼ぼうとダイヤルをタップする自分の手が、恐ろしいくらい震えていた。