濃藍のうた〔N O〕 (ページ14)

今日:18 hit、昨日:20 hit、合計:61,964 hit

あなたの居ない部屋③ ページ14

濃藍色の絵の具を、コトッと静かにテーブルに置いた。

そして今度は、チラリと部屋の隅に置いてある布団に目を向けた。

キレイに畳まれた1組の布団。

いつもいつも、敷きっぱなしだった。

それは、俺よりも智の方が後に起きるから。

その一つの布団で、俺達は体を寄せ合って寝ていた。

初めて一緒の布団で寝た夜。

俺は全身全霊で智に愛情を伝えた。

首筋に吸い付いた時の香りも、肌に唇を這わせた時に聞こえてきた声も、下着の上から触れた時の温度も、快感に浸る表情も。

全てが鮮明に残っている。

俺の与えた刺激にうっとりとした表情を浮かべる智に、小声で「ちょっと待っててね」と言って。

そばに置いておいたゴムを手に取り、包装を破って自身に装着した瞬間。

一気に興奮度が増した。

ああ、これから俺達は、一つになるんだなって。

期待に胸を膨らませたように俺を見上げる智に、チュッとほっぺたにキスを落としてから。

時間をかけて馴らした智の体の中へ、ゆっくりと自身を埋め込んでいった。

苦しそうな表情を浮かべる智とは裏腹に、思わず下唇を噛みたくなるほどの快感に包まれた。

なるべく優しくって自分に言い聞かせながら、馴染ませるようにゆっくりと体を動かし始めたら。

智の表情も声も、段々と艶めかしくなっていき。

「気持ちいい？」て聞いたら。

「めっちゃ気持ちいい」て返ってきたから。

「俺もすーげぇ気持ちいいよ」て返した。

初めて繋いだとは思えないほど、俺達の体は見事に溶け合い、互いに快感の声を上げながら一緒に果てた。

その日から、俺達は数えきれないほど、この布団の上で体を繋いできた。

どんなに喧嘩をしても。

愛し合ってきた。

暑い夜は、互いの体温をウザがり。

寒い夜は、互いの体温を求め合い。

そうやって、一緒の夜を過ごしてきた。

真っ暗な孤独な空間で、ひたすら思い出に浸る自分。

広く感じる布団で、暗い天井を見上げながら、俺はようやく気付いたんだ。

自分が思うより。

俺は。

智のことを愛していた。