背負うモノの重さ ページ41
小さくなっているその背中に、手を伸ばそうとしたら
相「………俺っ…翔ちゃんと付き合う資格なんてないよっ…」
か細い震えた声が聞こえ、手を止めた。
櫻「え？」
相「…だってっ…俺も逃げたんだからっ…」
櫻「………」
相「…翔ちゃんを好きでいるのが辛くなってっ…楽な道に逃げたんだよっ…？」
櫻「相葉くん…」
相「…俺にはもうっ…翔ちゃんと付き合う資格なんてないよっ…俺は、彼女のことを幸せにしてあげなきゃいけないんだからっ…」
俺に背を向けたまま小さく震える相葉くんの後ろ姿が、やけに悲しそうに見える。
『俺と付き合う資格はない』
『彼女を幸せにしてあげなきゃいけない』
その言葉に、相葉くんの背負う『責任』を感じた。
俺を想う気持ちから逃げたから。
逃げて、彼女を選んだから。
だから、責任取って彼女との未来を歩んでいかなきゃいけない。
俺にはそう聞こえた。
キミは本当にそれでいいのか？
櫻「…じゃあ、俺より彼女を取るってこと？」
相「…しょうがないよっ…」
しょうがない…
その一言で、望まない恋愛をしているのがすぐに分かった。
やりきれない思いで布団の方へ視線を下ろすと、視界に映る背中が動いた。
視線を前へ向けると、相葉くんが布団から体を起こして、俺の方を向いていた。
掛け布団に擦られて乱れた髪の毛のまま、明るさなんて一切ない表情で俺を見ている。
その顔が俺に訴えている。
櫻「相葉くんさ…彼女のこと本当に好きなわけ…？」
相「当たり前じゃんっ…」
櫻「本当に？」
相「しつこいよっ…」
櫻「だったらさ」
相「なにっ…」
櫻「なんで泣いてんだよ」
俺を見る目から、ツーっと涙が頬を伝っていた。
相葉くんは、演技で簡単に泣けるようなタイプじゃない。
つまり、今流れている涙が真実なんだ。
櫻「泣くほど悲しい恋愛してんの…？」
相「違うしっ…勝手に出てるだけだしっ…」
櫻「その涙を拭えるのは誰なの？」
相「なにそれっ…こんなん自分で拭うしっ…」
相葉くんはゴシゴシと、浴衣の袖で雑に涙を拭った。
櫻「相葉くん。正直な気持ちを聞かせて」
相「さっきから言ってるってばっ…」
櫻「相葉くん！」
今度は強めの口調で呼ぶと、一瞬だけ体をビクッとさせて黙り込んだ。
櫻「キミを支えてくれる彼女と、ヘタレで自分勝手で最低な男、どっちの方が好き？」
濡れた黒い瞳を、真っ直ぐに見つめた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
