太陽に口づけを〔S A〕 (ページ36)

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決戦の始まりページ36

そんなに大きくはない旅館だけど、それなりに小綺麗な所で。

ちょうど今はそんなに忙しくない時期なのか、急な宿泊にも関わらず、スタッフを含めた全員が泊まれるほどの余裕があった。

俺らには、5人では勿体ないくらいの大部屋を用意されていて、温泉も0時～2時まで貸切にしてくれた。

旅館のスタッフの方々の配慮に感謝しながら、俺らはご好意に甘えることにした。

通された大部屋には既に布団が5枚敷いてあって、仲良くくっついて横並びになっている光景に、5人で手を叩いて笑った。

櫻「わー…なんか修学旅行みてぇ(笑)」

松「ていうかさ、昔こういうロケあったよね(笑)」

相「あれでしょっ？あの、パジャマ着て！」

ニ「ただ、ウダウダするやつね」

大「懐かしいなぁ～」

なんだか昔に戻ったようで、和室に敷かれた布団を見てワクワクした。

荷物を置き、旅館の浴衣に着替えると、俺らは自然とテーブルの座椅子に腰掛けた。

5人で使うにはスペースの有り余るテーブル。

その上には、スタッフからの差し入れの缶ビールとおつまみ。

一応、今は労働時間外ということで、俺らは迷うことなくビールを手に取った。

5人での乾杯の後、今日一日の疲れを癒すように、それぞれが喉を鳴らしてビールを流し込む。

カメラの回っていない所で、こうやって5人で過ごす時間は貴重だ。

ぺちゃくちゃと話すわけでもなく、それぞれがこの時間を静かにまったりと過ごしている。

俺らはいつも仲良く喋っているイメージだけど、カメラが回っていない所では、意外とそんなに喋らない。

本当に仲が良いからこそ、会話のない時間を過ごせるんだ。

俺は目の前に置いてあるテレビのリモコンを手に取り、ピッとテレビをつけた。

適当にチャンネルを変えながら、なんとなしにテレビを観ている自分。

スマホのアプリゲームを始めるニノ。

ひたすらスマホとにらめっこする大野さん。

スマホを弄りながら、時折テレビに視線を移す松潤。

俺と同じく、なんとなしにテレビを観ている相葉くん。

その相葉くんの手元に置いてあるスマホが、重低音を響かせて震えた。

すぐに画面を見た相葉くんが、一瞬だけ俺の顔を見た。

そして

相「…ごめん。ちょっと電話してくるね」

誰に向かって言うわけでもなく、ぽつりとお決まりのフレーズを呟いて、相葉くんは部屋を出ていった。

俺の最大の敵からの電話。

頭で考えるよりも先に、俺は相葉くんの後を追っていた。