太陽に口づけを〔S A〕 (ページ35)

今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:151,053 hit

ワンモアチャンスページ35

あのまま俺らの関係は何も変わることなく、時間だけがあっという間に過ぎていく。

あれから相葉くんとは、適度な距離感で接している。

交わす会話も当たり障りのないものばかり。

恋愛やカノジョのことや俺らの関係に関することには一切触れることなく、メンバー同士として仲良く過ごすだけ。

厳密には、『仲が良い風』に過ごしている。

別に仲が悪くなったわけではない。

だけど、俺らの間にあるわだかまりは、そう簡単には消えはしない。

もしもあの時、俺が相葉くんにキスしようとなんてしていなければ、こんな曇った空間など存在しなかっただろうに。

…いや、きっといつかは、こうなっていたんだよな。

すれ違う想いが風船のように膨れ上がり、バンッと破裂しただけのことだ。

その風船を、自ら針を刺して割ったか、限界まで膨らんで自然に破裂しただけかの違い。

今はその破裂した風船をどう修復するかが問題。

そのままゴミに捨てて、もう忘れようとも思った。

だけど、大野さんの言葉が、ゴミに捨てようとする俺の手を止めた。

でも実際、なすすべもなくて、何も出来ないでいる自分。

もしも俺に、もう一度チャンスが訪れたとしたら、今度は逃げないでしがみつきたいと思う。

そのチャンスは、訪れるのだろうか。

ただその時を待っているだけの自分に、チャンスなんて一生来ないような気がした。

嵐のレギュラー番組の収録の日。

今回は特番の企画で、スタジオ収録ではなく、5人揃ってのロケ。

久しぶりに5人フルメンバーで乗るロケバスは、地方の避暑地へと向かっている。

着いた場所は完全に山の中で、少し行けば温泉もあるような観光地だ。

「5人でロケなんて久しぶりだね」なんて言いながら、いつもよりもハシャいで始まった収録。

だけど、収録の合間の休憩時間には、「俺らも歳とったね」という言葉が出てくるほど、5人ともバテていた。

途中までは順調に進んでいた収録。

だけど、天気が変わりやすい山の中での収録は、途中から思うように進まなくなり、ようやく全てが終了した頃には、空は真っ暗になっていた。

予想以上に押したなぁ…なんて思いながら、チラリと腕時計を見た時。

若いスタッフの子が、俺ら5人の方へ駆け寄ってきた。

ディレクターの粋な計らいで、近くの旅館をとってくれたという。

マネージャーの許可も降りている俺らは、そのまま旅館に宿泊することにした。